昨年ACミランを中国の投資ファンドから買収した、ポール・シンガー氏率いるエリオット・マネジメントが、徐々にユニゾホールディングスの株式買い増しを行っている。
HISの敵対的TOB
ユニゾホールディングスといえば、7月11日に日本の旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が株価3100円で発行済み株式の40.2%を上限に最大427億円で買い付けるTOBを発表、ユニゾHD側がこれに反対したため、日本では珍しい敵対的TOBと注目を浴びた。
これに対し8月16日、米ヘッジファンドフォートレスがユニゾHDの完全子会社化を目的とするTOBの実施を発表。買付価格は1株4000円とHISの3100円を約3割高い価格を提示し、TOB期限までに株式を集められなかったHISの敵対的TOBは失敗に終わった。しかし、8月16日以降株価はフォートレスが指定した4000円以上で推移している。そのためフォートレス側は10月7日のTOB期限までに株式を買い集めることに苦労していると考えられる。
エリオット・マネジメントのTOB介入
そうした中で、エリオット・マネジメントは8月6日に5.51%ユニゾHD株を持っているという大量保有報告書を届け出た後、9月20日11.98%まで買い増しを続けている。大量保有報告書の保有目的欄には「投資。なお、状況等に応じ、建設的な対話(エンゲージメント)や助言、重要提案行為等を行う可能性もある。」と記載があるが、現在のところ投資目的を表明していない模様だ。
しかしこの状況で思い出すのは日本で行われた2回にわたる買収・経営統合への介入だ。1つ目は2017年に米バイアウトヘッジファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が行った、日立国際電気へのTOBへの介入である。エリオットは株主として2回のTOB価格の引き上げに成功している。
2つ目は昨年米ヘッジファンド、オアシス・マネジメント・カンパニーがアルパインとアルプス電気の経営統合に反対していた事案である。オアシス社が統合を反対して、アルバイン、アルプス電気株の買い増しを進める中、突如エリオットマネジメントもアルパインとアルプスの株式の買い付けを進め、オアシスとエリオットで20%近い株式を保有する状況になり、市場はエリオットの動向を見守った。結果としてエリオットマネジメントはオアシス・マネジメント・カンパニーとは敵対する方針を取った。アルパインとアルプス電気に対して、株主還元の強化の約束を取り付け、経営統合には賛成の方針を取るという試合巧者を見せつけた。
9月24日には野村證券も大量保有報告書を提出しており、いまだに株を保有しているとみられるHISの動向を含めて、各社の駆け引きはますます強まっていくと考えられる。
国家との法廷闘争もいとわないハゲタカファンドとして有名なエリオットマネジメント、経営統合というイベントドリブンにより、今回もスマートにリターンを獲得することができるのか、引き続きその動向に注目したい。
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