英老舗旅行会社破産でヘッジファンドが巨額リターン


  178年の歴史を持つイギリスの老舗旅行会社トーマス・クック・グループが23日に破産を申請、傘下の航空会社を含むすべての営業が停止し、その影響が広がっている。その裏で、ヘッジファンドが最大で約270億円もの利益をあげる可能性があるとのことでその行方にも注目が集まっている。

英老舗旅行会社トーマス・クック・グループ破綻の影響

トーマス・クック・グループは旅行時に使うトラベラーズチェックを普及させるなど、英国での旅行業の最古参の会社であった。破綻の原因はインターネットの普及、LCCの出現、民泊の一般化など環境の変化への対応が難しかったためと考えられている。

営業停止により当該旅行会社を使っていた、15万人に及ぶツアー客は帰りの飛行機が無くなり立ち往生することとなった。イギリス政府は、『マッターホルン作戦』によりチャーター機を手配して救済を行う方針を示したが、その負担が1億ポンド(約133億円)に上ると報道されている。

英政府は救済しない方針を明確化

英政府は救済しても、遠くない未来に同社は倒産する可能性が高く、救済費用のほかに今回『マッターホルン作戦』発生する費用も発生したとの見通しを述べている。

今回の老舗企業の倒産は、EU離脱時の混乱の際の救済に関するハードルを高めたとの指摘もある。今後EU離脱に際して、環境の変化によりイギリスの少なくない企業が混乱に巻き込まれ、困難に陥ると見られているためだ。今回のトーマス・クック社破綻で世界的に2万2000人(英国内では9000人)の雇用に影響が出ると見られている。

クレジット・デフォルト・スワップとヘッジファンドの巨額利益

この帰国騒動の一方、トーマス・クック・グループの破産が、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の支払い基準を満たすのかどうかに関しても、金融関係者の注目を集めていた。これについて23日に国際スワップデリバティブ協会は、トーマス・クックによる同日の強制的清算は信用事由に該当すると判断を示した。これにより、トーマス・クック・グループのCDSは支払いが行われる見込みとなり、ヘッジファンドのソナ・アセット・マネジメントとXAIAインベストメントは最大2億5000万ドル(約270億円)を受け取る可能性が高まった。

仮にトーマス・クック・グループが救済されればこのCDSの価値は急落する可能性があった。

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)はトーマス・クック・グループに対して債権などを持つ会社が、保険として購入する場合は、同社の「倒産は望まない投資家」による損失の低減として批判にさらされないが、今回のヘッジファンドが利用したように利益を得る手段として利用した場合は、「倒産を望む投資家」となり救済策に対して具体的な反対の行動をとっていた場合は、批判にさらされる可能性もある。

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