バンダ・グローバルファンドは、グローバル・マクロ戦略を採用したヘッジファンドである。グローバルに分散したポートフォリオの中で、株式、金利、コモディティを含む複数の資産クラスに積極的に資本を配分することにより、長期的な絶対収益を生み出すことを目指している。運用はグローバルなマクロ・トレンドや経済状況を踏まえたポートフォリオ資産の配分を活用するため、高度に統制されたリスク管理の枠組みの中で、管理された先物戦略を用いてリスク加重手法を追求している。その運用実績は良い意味でも、悪い意味でも非常にドラマチックだ。
2016年に、友人や家族から集めた資金2400万ドルで運用を始めたバンダグローバルファンドの運用は、開始の年から困難な状況に陥っていた。初年度の運用成績は-59.3%と通常であればファンドは閉鎖になってもおかしくない実績であった。これは11月-36%、12月-34%という一か月単位ではまず体験しないようなマイナスによっても取らされたものだった。しかし2017年に入り、最初の5か月中4か月は20%近いリターンを稼ぎ出し、最終的に2017年に260%プラスという離れ業によって、復活したのであった。
2018年は再び大きな困難な年であった。2018年は30%以上マイナスの月を2回を出して、年間を通してー49%と大きなマイナスを記録してしまったのだった。しかしこのマイナスは、大きなリターンを得るための一時的なマイナスだったのだろう。2019年の1月には58%プラスと大きくマイナスを取り戻し、2019年を通して320%のリターンを記録し世界一の称号を受けることになった。チョン・チンイアイ氏はブルームバーグへの取材に対し「2019年は異常である可能性が高く、毎年このようなリターンを期待しないようにクライアントに警告している」と述べている。
近年多くのヘッジファンドは、年金基金等の機関投資家の資金を受け付けられるようにリスクを抑えた運用がスタンダードになっている。意外かもしれないが、ヘッジファンドの多くはレバレッジをあまり使わない運用も増えてきているのが現状だ。かつてのジョージ・ソロス氏のクオンタム・ファンドや、ジュリアン・ロバートソン氏のタイガー・ファンドのようにハイリスク・ハイリターンのヘッジファンドは減少傾向である。大手でハイリスク・ハイリターンのファンドというと、身内の資金のみに特化したジェームズ・シモンズ氏のメダリオンぐらいではないだろうか。他のレイ・ダリオ氏のピュア・アルファやケネス・グリフィン氏のシタデルなどもどちらかというと安定した実績といえるだろう。
2019年はバンダ・グローバルの他にも、シンガポール籍のグローバル・マクロファンドの幾つかは記録的な成績を残した。アジアの大手ヘッジファンドで、現在は既存投資家からのみ追加投資を受け付けているクオンテッジ・グローバルファンドは2019年70.46%プラスとなったようだ。また他の運用7年目のグローバル・マクロヘッジファンドも115%プラスになっているようだ。こうした運用が可能なのは、シンガポールの投資家にリスクテイカーが多くいることが要因だという。クオンテッジ・グローバルファンドは、運用は適切なリスクを取ることがリターンにつながると説明している。
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