ポートフォリオ運用は、性質や値動きの異なる複数の資産に分散ささて運用することにより、安定的な運用成果を目指す手法だ。主に機関投資家が取っていた手法だが、近年のファンドラップやロボアドバイザーサービスの登場により個人投資家にも広まっている。分散方法はそれこそ何兆通りも存在するが、分散投資の考え方を知らないまま運用している投資家も多い。分散投資を行う上で必須の知識、各資産クラスの関係を解説する。なお、資産クラスの中で分散させる方法もあるが、今回は資産クラスの関係のみを見ていく。
ある個人投資家の分散投資の例
例として、下記のようなポートフォリオを考えてみる。株式・債券・外貨が混ざった、よくあるポートフォリオだ。一見株式60%、リート20%と債券20%、日本40%と世界60%に分散して投資されていて良く分散されたポートフォリオだと思われるかもしれないが、実はそうではない。問題点を見ていこう。
以下は、各資産の相関係数だ。-1から1の値を取り、1に近いほど同じ値動き、-1に近いほど真逆に動くという意味である。これを見ると株式とリート部分の相関が非常に高く、似た動きをしていることがわかる。そのため、株式市場が暴落した場合資産の80%が同時に値下がりする可能性が高い。このポートフォリオでは、資産分散の意味が薄いと言える。
資産ごとの特徴
分散方法を考えるにあたり、各資産の特徴を整理する。下に各資産の値動きの要因を簡単にまとめた。【短】と記載があるものについては、短期的な値動きに影響するものを意味している。債券については、金利環境によって異なる。マイナス金利下の日本やドイツでは、債券価格は大きく変動しにくい。
①好況時
経済が活発化し、企業の業績は上がる。不動産市場も活性化するため、株式と不動産は値上がりする。一方、金利は上昇するため債券価格は下落。他資産から株式への資金シフトが起こる。
②不況時
企業の業績が悪化し、不動産市場も沈静化。株式と不動産は値下がりするが、金利も下落するため債券は値上がり。安全資産の金も値上がりする。
※金やコモディティは、基軸通貨である米ドルと同じように「世界共通の通貨」という側面があるため、米ドルと逆に動く傾向がある。また、現物資産のため貨幣の価値が下がるインフレ期には上昇、デフレ期に下落する。株式市場の影響はそこまで無く、需給が一番の決定要因だ。リーマンショックの際にも、同時期に起きた食糧危機の影響で小麦価格はほとんど下がらなかった。
ここもとのコロナショックで、原油の置き場がなさすぎて初のマイナス価格をつけた。お金を払ってでも原油を引き取ってほしい人がいるということで、需給の状況が悪いとこういったことも起こる。
下に、金と米ドル円・小麦とNYダウのチャートを添付した。コモディティ投資については、こちらの記事で詳しく解説している。
この説明はあくまで一般的なものであり、政治や世界情勢により様々な例外があり得る。コロナショックでは全ての資産が下落した。株式はもちろん、安全資産だったはずの債券も原油価格の急落によりシェールオイル企業の倒産懸念が生じ暴落。日本国内の銀行も、リートを3月末の決算に向けて投げ売ったようだ。資産を問わず、とにかくリスクを落としておきたいという動きから現金化がすすんだ。あくまで一般論としてご理解いただきたい。
正しい分散投資の考え方とは
分散投資の目的は、リスクを分散させることだ。下の表(再掲)の相関係数から考えると、株式・世界債券・コモディティの関連性が比較的低い。この3つの資産を組み入れることで、ある程度リスクを抑えた運用ができるだろう。コモディティは他の市場に比べ規模が小さく値動きが大きいため、少しの割合で良いと思う。
資産分散の最適な割合は、運用の目的や期間によって異なる。長期間引き出さない資金での運用であれば、ハイリスク・ハイリターンな株式の比率を高くした運用が良い。逆に子供の教育費など使い道が決まっていてあまりリスクを取れない資金では、下がりにくい債券を多めに組み入れたほうが良いだろう。ポートフォリオの具体例としては、「資産運用の決め手、ポートフォリオの具体例」で紹介している。
本記事では触れないが、同じ分散投資の方法で「時間分散」という方法もある。投資タイミングをずらすことでリスクを抑えることができる。積立投資という手法だが、これについてもこちらで詳しく説明している。
おわりに
資産運用を行う上で、ポートフォリオの考え方と資産ごとの関係は不可欠の知識だ。常に自分の資産のバランスを考えながら運用することで、良い結果につながると思う。
※上記は参考情報であり、将来の投資成果を保証するものではありません。
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