ヘッジファンドとESG投資

「どんな相場でも絶対収益を追求するヘッジファンド」と「環境や社会に配慮し、持続可能な企業に投資するESG投資」は相反するように聞こえるが、実はそうではない。近年ESG投資を取り入れているヘッジファンドは増えており、世界最大級の運用会社であるブラックロックによると好調なパフォーマンスを残しているようだ。今回は、ヘッジファンドとESG投資について解説する。

目次

ヘッジファンドに求められるESG投資

運用会社であるCallanが昨年まとめた調査によると、米国の機関投資家のうち42%がESG情報を投資プロセスに組み込んでいるという結果であり、2013年に比べて2倍近くに増加していた。またBarclayHedgeのレポートでは、2018年にはヘッジファンドマネジャーの40%以上がESG情報を投資プロセスに組み込んでいるという。

2008年のリーマンショック以降、単純な国際分散投資では資産を守れないと知った機関投資家はヘッジファンド投資を拡大してきた。ヘッジファンドにESG投資が求められる要因として、近年そういった機関投資家からESG投資を行うよう要請が高まっていることがあるようだ。コロナショック下でも資金流入は続いており、ブラックロックのレポートでは今年だけで3月末時点で405億ドル残高が増加したようだ。前年比では41%増加したことになる。下図で、ESGファンドとアメリカのMMFの残高を比較している。


※出所:Blackrock『Sustainable investing: resilience amid uncertainty』

ESG投資ヘッジファンドのパフォーマンス

景気後退時にベンチマークを上回る運用を行ったESGファンドの割合は、以下のようになっている。非常に高い割合となっており、明らかに「相場下落局面で下がりにくい」特徴があるとわかる。


※Blackrock『Sustainable investing: resilience amid uncertainty』より作成

相場の暴落局面では、ESGの特徴である「持続可能性」が強く意識される。日本でもレナウンの破産申請などあったように、持続可能性の低い企業は倒産やクレジットが意識され売却される傾向がある。ESG経営を行っている企業の従業員満足度の高さ、取締役会の有効性、顧客との関係の強さなどがこのパフォーマンスの要因だったようだ。

ESG投資のシミュレーション

このレポートでは、シミュレーションとしてESG投資ヘッジファンドのパフォーマンスを検証している。世界企業を対象に独自の指標を用いてESG経営を行っているか評価し、スコアの高い企業をロングし、スコアの低い企業をショートした仮想のヘッジファンドだ。結果は以下の通り、4月末までの4か月で1.5%のリターンを記録している。同時期のバークレイ・ヘッジ・インデックスが7%下落していることを考えると、驚くべきパフォーマンスだ。


※出所:Blackrock『Sustainable investing: resilience amid uncertainty』

更に、セクター別にESG投資を行った際のパフォーマンスの勝ち負けも分析されている。結果は以下の通りだ。基本的にESG投資の勝率が高いが、例えば一般消費財ではESG経営を行う自動車メーカーの株価が不振だったことでこのような結果になったと考えられる。


※Blackrock『Sustainable investing: resilience amid uncertainty』から作成

おわりに

ヘッジファンドが機関投資家の要請に応じる形で始まったESG投資だが、今回のコロナショックで下落耐性や回復力の強さが明らかになった。まだESG投資を採用していないヘッジファンドも多いが、機関投資家の意向だけでなくこのパフォーマンスによって、拡大することが予想される。システム運用の第一人者であるManグループもESG投資に関する分析を行っている。今後のヘッジファンド業界の動向に注目だ。

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