資産運用を行う上で、特に短期では安値・高値を見極めることが重要だ。完璧に当てることはできなくとも、相場の流れや現在位置を知ることで効率の良い資産運用を行うことができる。
今回は、世界中で支持されている相場理論、エリオット波動とフィボナッチ数を解説する。相場の大局観を養う上で非常に重要な考え方のため、最後までお読みいただけたら幸いだ。
相場位置を知るエリオット波動
米国のアナリスト、ラルフ・ネルソン・エリオットが考案した理論で、「相場は上昇5波・下降3波のリズムを繰り返す」というもの。1930年ごろに確立された。相場は無秩序だと考えられていた中で、相場に一定のサイクルがあると発見した画期的な理論となった。図で表すと以下のようになる。
S&P500指数を例に見てみよう。2010年から2011年のチャートは、概ねエリオット波動に従っていることがわかる。もちろん理論のように綺麗に動くわけもなく、中に細かい波もあるが中長期的にはこのように動くことが多い。
だが、ここまでの知識では「後から見たらこの形になっていても、今の波がどこかなんてわからない」ということになってしまう。エリオット波動の特徴を知ることで、今の波が波動の一部なのか、波動が転換したのかがわかる。
エリオット波動のルール
エリオット波動のルールとして、重要なものを3点紹介する。
ルール①・波動2が波動1のスタートを割り込むことはない
このようなチャートの場合、この前から続く下落相場の一部である可能性が高い。
ルール②・波動3が一番短くなることはない
下の例では波動3が短すぎるため、ここでの(4)と(5)は波動3の一部になる。
ルール③・波動4の下落が波動1の頂点を下回ることはない
この場合も②と同様に、波動3の一部と考える。
細かいルールはほかにもあるが、この3つだけ抑えておけば今が第何波にあたるかはわかりやすくなる。
上値、下値を予測するフィボナッチ数
フィボナッチ数列とは、イタリアの数学者レオナルド・ダ・ピサが考案した黄金比率を表現する数列のこと。見た目上もっとも心地よいと感じる比率で、自然界を支配する数列と言われている。相場もこのフィボナッチ数が一つの目安になる。
相場でよく使われるのは78.6%、61.8%、50.0%、38.2%、23.6%の5つだ。どういうことかチャートで説明する。
※S&P500指数(2019年6月~10月末)
起点になる高値・安値をつけたあとの上下の目安になることがわかるだろう。例の場合下値は38.2%、その後の戻りは78.6%が意識された。どの比率で転換するかは相場状況によって変わるが、こうした動きになることが多い。
理由としては(おそらく)人間の無意識の判断が表れていることと、このフィボナッチ数を意識している投資家が多いことだ。反転の目安として取り入れている投資家も数多い。ただしあくまでテクニカル分析であるため、個別銘柄のリスクや政治動向、経済指標といった出来事には対応できないことには注意が必要だ。
直近の相場環境
では、直近の相場環境で考えるとどうなるか?S&P500指数のエリオット波動とフィボナッチ数についてグラフにまとめた。
リーマンショックで下値を付けて以降上昇局面が続き、エリオット波動は上昇5波を消化し下降局面に入ったように見える。フィボナッチ数でも61.8%戻しを達成した。経済活動の再開期待が大きいが、企業業績の悪化は避けられない。これは筆者の個人的な意見だが、下落に備えた運用が必要なのではないだろうか。
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