ロンドンのマルチストラテジーファンド、Fulcrum Diversified Absolute Return Fund が4月末時点で6.2%のリターンを上げた。バークレイヘッジ・インデックスの同種マルチストラテジー戦略の平均リターンはマイナス6.3%であるため、投資手法が注目されている。
Fulcrumは、12年ゴールドマン・サックスで投資部門に所属していたAndrew Steven氏と英首相の経済政策顧問やBBC会長などを歴任したGavyn Davies氏が2004年に共同で設立したマルチストラテジー戦略のヘッジファンドだ。
このファンドはダウンサイドリスクのヘッジに重点を置き、安定的なリターンを生み出すことを目標にしている。実際にS&Pよりも下落幅は小さく、リスクも3分の1程度に抑えられている。
Fulcrumの運用戦略
30人以上のアナリストを擁するFulcrumは、株式投資戦略やグローバルマクロ戦略からCTA、キャリートレードなど数多くの投資戦略を用いることが可能だ。ボラティリティの低い運用を掲げており、株式への投資比率は20~25%ほどと低い。今回のコロナショックでもその影響の大きさを早期に予見し、ポジションを変更することで利益を出した。リーマンショック後に長年行ってきた分析が役立ったとヘッジウィークのインタビューで答えている。
直近半年の値動きは図の通りだ。3月の下げ相場から4月は一転強力な上昇相場となり、2か月連続でリターンを上げたファンドは全体の13%しかなかった。「全天候型運用」を掲げており、残高は43億米ドルまで積みあがっている。
3~5つのコア戦略と15~30のサテライト戦略を組み合わせ、厳格なリスク管理運用を行っている。ファンド全体のリスクは4月末時点で5.5%と、年金運用を行うGPIFのリスク水準10%程度と比べても非常に低い水準だった。
ここ数年は好調な株式市場に劣るパフォーマンスだったが、今回の暴落で下落耐性が明らかになった。ボラティリティの低さから、年金基金など機関投資家からの人気が高まりそうだ。
マルチストラテジー戦略とは
詳しくは「ヘッジファンドの運用戦略」で解説しているが、マルチストラテジー戦略とは複数の投資戦略を組み合わせる手法のことをいう。1つの会社で複数の運用戦略を管理するため、大手にのみ可能な戦略だ。ファンドオブファンズとの違いは、マネジャーの分散が十分にされていないため戦略に偏りが出る場合があることと、自社内で完結するため手数料が安くなること等があげられる。
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