レイ・ダリオが予測する世界

 世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創設者、レイ・ダリオ氏がLinkedinで「過去500年に見られた大きなサイクル」と題して今後の世界秩序を予測した。
 1600年頃からの歴史を振り返り、「帝国」と呼ばれる国の盛衰を振り返る内容で、米国の覇権は長く続かず、中国が著しく台頭してきていると述べている。

目次

覇権国のサイクル

 人生にも学校卒業まで・労働・老後と大雑把に3つのサイクルがあるように、覇権国にも以下の図のようなサイクルがあるという。新たな世界秩序が生まれた後は期待によって資金が流れ込み、バブルにつながる。弾けた後に国の信用も落ち、内部の紛争が起きる。それによって国力が落ち、新しい覇権国が誕生するという流れだ。


 過去400年で、世界の覇権国は以下のような変化をたどってきた。「覇権国」の内容としては、教育・技術・軍事・貿易・生産・金融・その他のセクターで構成されている。オランダの歴史から簡単に振り返っていこう。


オランダの盛衰

 1600年~1780年頃まで、オランダは世界の覇権国だった。船での貿易により富と軍事力を得てまさに黄金時代といえるだろう。オランダ躍進の理由としては2つあるとレイ・ダリオは述べている。

①優秀な造船技術

 アムステルダム号に代表されるようにオランダ船の性能は特に優れていた。当時オランダはスペインと争いが絶えず、そこで養われた軍事力をもとに世界中の富を集めることができた。

②資本主義

 「世界初の株式会社」は、オランダ東インド会社である。1602年に設立され、同年世界初の証券取引所(アムステルダム取引所)へ上場している。この発明により、企業の資金集めが飛躍的に改善された。レイ・ダリオの考える資本主義は、多くの人々が集合的に出資し、お金儲けのために所有権を購入すること。つまり、この株式会社の仕組みこそが資本主義なのである。

 上記の理由に加え、オランダの通貨ギルダーは世界で広く受け入れられ、世界で初めて準備通貨として認められた。イギリスが成長し始める1700年頃までオランダの成長は続いた。

 アムステルダムが世界の金融セクターとしての地位を固めていく中で、他の国々も勢力を拡大していった。競争の激化に伴いオランダの収益力は低下し、イギリスが取って代わることになる。

イギリスの盛衰

 イギリスでは17世紀以降に財政革命や植民地対策、農業・産業革命など多くの変化を遂げていた。また、当時オランダとイギリスは経済的に様々な対立を抱えていた。1750年頃、オランダでは貧富の差が大きかったことや内紛が起こっていた。対してイギリスの国力は増しており、1780年に両国間で戦争が勃発した。これにイギリスが勝利したことが決定打となった。

 その後ポンドが基軸通貨として長く君臨する。その時の各国の貿易関係は下図の通りだ。ネットワークが構築され、ポンドが循環する体制だったことが大きかった。


 イギリスの繁栄期には鉄鋼、電気、白熱電球など様々な技術革新が起こった。英国だけでなく世界中が大きく成長し、国家間の競争が過熱するに連れイギリスの優位性は薄れていった。代わりに台頭してきたのがアメリカである。

 アメリカの経済力がイギリスを逆転したのは19世紀末ごろだった。その後二度の世界大戦で欧州は疲弊し、1944年のブレトンウッズ協定によって米ドルが世界の基軸通貨になった。イギリスはGDP比で250%もの借金を抱え、覇権国の交代が起こった。

アメリカの覇権~現在まで

 米ドルと金の兌換を停止するニクソンショックにより、世界は新たなステージに入った。金兌換の廃止により通貨と信用は膨張。ITバブルや不動産バブルなどが引き起こされた。政府債務は積み上がり、各国中央銀行は低金利政策を余儀なくされている。アメリカ国内でも貧困率は17%に上り、貧富の差の拡大が問題になっている。
 
 レイ・ダリオ氏自身もジョージ・ソロスやウォルト・ディズニーの孫娘アビゲール・ディズニーらと共に富裕層課税の嘆願書を昨年公開しており、不平等の解消に向けて動いている。貧富の差が縮まれば、覇権国としてのサイクルを戻すことが可能かもしれない。

中国の成長

 1976年の毛沢東の死後、中国では大企業の個人所有・株式市場の発展・技術革新など様々な政策を打ち出した。レイ・ダリオ氏が初めて中国を訪れたのは1984年だそうだが、その頃と比べて教育は劇的に改善され、一人当たりの実質所得は24倍に。貿易ではアメリカを抜き世界最大の貿易国となった。外貨準備資産も世界最大で、2位の日本に2倍以上の差をつけている。


※『ジェトロ世界貿易投資報告』より作成

 このブログは、今秋発売予定のレイ・ダリオ氏の著書『The Changing World Order』の内容紹介として書かれたもので、過去に焦点を当てる章の紹介であるため将来についての記述は少なかったが、超長期の分析は貴重だ。当然過去と現在では各国の関係や経済環境、軍事力など異なるため「米中間で武力衝突が起こり、中国が覇権国になる」と考えるのは現実的ではないように思える。もちろん筆者個人としてもそうなってほしくない。

 ただ、歴史は繰り返すという言葉もある。香港への国家安全条例の適用を巡り、米中対立はますます激化している。成長する国に投資するのが運用の鉄則だ。今後の米中関係からますます目が離せない。

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