新興国株式を買うべき理由8選

 先日のFRB会合でも低金利政策の継続が明らかになり、長期的な経済見通しは大きく変化している。これからのポートフォリオを考える中で、新興国はどのような位置づけになるか。ブラジルで感染拡大が止まらないなど慎重な見方も多いが、英国のGAM Investmentsのファンドマネジャーは「売られすぎの水準」と見ている。6月9日に発表されたレポートをもとに、新興国株式を買うべき理由を8つ解説する。


※MSCIより作成

目次

1. 圧倒的な金融緩和

 中央銀行の金融政策はFRBやECBが規模の大きさから注目されがちだが、新興国も様々な金融政策を発表している。下の図は、債券購入を導入した新興国の例だ。流動性を確保し、市場の安定性を保つことを第一目標にしている。経済対策費は世界全体での8兆ドルに達している。リーマンショックの際はこうした動きは見られなかった。


 なお、アメリカFRBの総資産の推移は以下の通りだ。半年でおよそ3兆ドルも増加しており、リーマンショック時の何倍もの金融緩和が継続している。各国協調して金融緩和を行うのは、今まで見られなかった光景だ。


※FRBから作成
 

2. 儲かりやすい産業に構造変化

 MSCI新興国株式インデックスのセクター構成は、以下のように変化してきた。エネルギーと素材の割合が減り、テクノロジーや一般消費財といった「新しい産業」に順調に移行していることがわかる。利益率は向上しており、業績の回復力も上がっている。また、金融の割合も高い。特にアジアの新興国は欧米に比べてコロナウイルスの影響も弱く、内需が回復すれば金融セクターも含めての値上がりが期待できる。


※GAM『EM EQUITIES: WHY NOW? IT IS DARKEST BEFORE THE DAWN』から作成

3. 割安度は過去最高

 コロナショック以前から、世界的な低金利環境により新興国の存在感は増していた。その後、経済停滞の懸念から投資家は株式投資を控え、利回りを求めるようになった。新興国通貨は歴史的な低水準にあり、GAFAMを筆頭とする米国成長株式は逆に歴史的な割高水準まで買われている。何かのきっかけで暴落が起き、資金が新興国に向かってもおかしくない。
 過去の「ニフティ・フィフティ」と状況は似ている(成長鈍化、景気後退リスク等)と分析している。 

 ※ニフティ・フィフティ…1960-70年代の米市場で人気となった大型優良株50銘柄のこと。ファンダメンタルズを無視した「根拠なき熱狂」の例として知られる。1999年のドットコムバブルにも同じことがいえる。

4. 新興国の評価アップ

 各国が経済対策で赤字国債を発行する中、格付け会社のS&Pが日本国債をポジティブから安定的に引き下げた。先進国の格付けが揺らぐ中で、新興国の評価は相対的に高まることが期待される。
 現時点から考えたら、今後3年では新興国株式が他を上回ると可能性も高い。例えば、香港のHFIインデックスのPBRは以下のように過去最低水準で推移している。


出所:GAM『EM EQUITIES: WHY NOW? IT IS DARKEST BEFORE THE DAWN』

5. リスクとリターン

 ここもとの株価上昇は経済再開のスピードに焦点をあてているため、コロナウイルスの第二波が来たときの下落も大きいと考えられる。韓国のクラブの例など、新興国の中でもアジアはこの第二波を先導して経験している。まだ第一波の最中である欧米と比べて、この経験は大きい。また、相場上昇時には新興国の方が先進国よりリターンが大きい。過去30年間で、底値で投資した場合1年間の平均リターンは45%と、先進国を18%上回る結果となった。
 現時点では、先進国の方がリスクが高くリターンも低いと考えられる。


※GAM『EM EQUITIES: WHY NOW? IT IS DARKEST BEFORE THE DAWN』から作成

6. 構造的に勝ちやすい

 より長期的な視点から見てみると、新興国の優位がわかりやすい。産業構造のシフトとともに、都市化・職場の女性の割合・デジタル技術・人口ピラミッドなど様々な指標が向上している。インドの人口ピラミッドは図の通りだ。「人口ボーナス期」で、発展していくのは間違いないだろう。


※世界銀行から作成

 また、S&P500指数を見てみると、上位5社の占める割合が年々高くなっている。30年間の上位5社の占める割合の推移は、以下のようになっている。GAFAは、4社ともここ20年で台頭してきたとわかる。現在急成長中のアリババ、テンセント、JDドットコムにも同じことが期待できる。


出所:GAM『EM EQUITIES: WHY NOW? IT IS DARKEST BEFORE THE DAWN』

7. 信用力拡大

 現在、上位10の新興国株式市場のうち8つが投資適格になっている。以前のような信用不安もなく、機関投資家等からも資金が入りやすい環境になった。

8. 今後の技術改革

 香港の大手証券会社であるハイトンは、今後5年間で中国のインフラ関連への投資額は3.8兆米ドルを超えると予想している。インフラといっても道路や設備だけではなく、5Gやクラウド、人工知能といったテクノロジーインフラについても多額の投資をする見通しだ。5月に開催された全人代でも、テンセントの創設者である馬化騰氏がこのデジタルインフラに投資し、進化させていくべきだと提案していた。

 中国だけでなく、ブラジルの年金改革法やインドのモディ政権下の改革など多くの新興国で改革が見られている。今後の動きにも期待が持てる。

おわりに

 新興国株式に投資する理由を8つご紹介した。もちろん相場に絶対はないため参考程度にしていただきたいが、筋の通った分析に見える。経済再開は先進国に比べて遅くなるだろうが、長期的には成長していくだろう。ボラティリティは大きいため、上手く仕込めば短期的にも利益が狙えるかもしれない。

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*GAM Investments :『EM EQUITIES: WHY NOW? IT IS DARKEST BEFORE THE DAWN』

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