CoCo債(偶発転換社債)とは?
CoCo債(ココ債)とは「Contingent Convertible Bonds」の略称で、日本語では「偶発転換社債」という名称で呼ばれている債券(社債)の一種です。CoCo債は債券ですが株式としての性質もあり、トリガー条項に抵触すると強制的に株式に転換されます。
トリガーとは、もともと拳銃の引き金のことです。あらかじめ決められていた条件に抵触すると、強制的に債券から株式に転換されることがCoCo債の特徴です。元本の一部や全部が削減されることもあり、トリガー条項に抵触すると損失が発生します。
なお、CoCo債のように債券と株式の両方の性質を持つ金融商品は「ハイブリッド証券」と呼ばれており、ハイブリッド証券は基本的にはハイリスク・ハイリターンです。
銀行など金融機関が自己資本増強のために発行する転換社債の一種で、発行体の自己資本比率が基準値を下回るなど、偶発的な事象であらかじめ定められた条件に抵触した場合、元本の一部または全部が削減されたり、強制的に普通株に転換される転換社債のこと。リスクが高い代わりに、通常の社債よりも高利回りとなっている。
そしてCoCo債の特徴としては「資本性証券であり株式転換型永久債」であることや、「バーゼル3でAT1債に分類」されることが挙げられます。
資本性証券であり株式転換型永久債
CoCo債は、債券と株式の両方の性質があるハイブリッド証券の一種です。なお、ハイブリッド証券は「資本性証券」とも呼ばれます。
また、CoCo債は償還期限がない「永久債」でもあり、株式に転換されない限り、永久的に利子(クーポン)を受け取れます。このように、CoCo債はトリガー条項に抵触すると株式に転換される永久債であることから「株式転換型永久債」とも呼ばれます。
つまりCoCo債は、ハイブリッド証券(資本性証券)の一種であり、株式転換型永久債であるということになります。
なおCoCo債は、トリガー条項に抵触して株式に転換されなければ、通常の債権と比較して高い利子を受け取れる点ではメリットがあります。しかし、債券よりも安全性が低い株式に強制的に転換されたり、元本が削減されたりするリスクがあることがデメリットです。
バーゼル3でAT1債に分類
CoCo債は「バーゼル3」でAT1債に分類されています。バーゼル3とは、国際的に活動する銀行の自己資本比率の国際統一基準であり、CoCo債が分類されるAT1債は通常の社債よりも弁済順位が低くなっています。
バーゼルⅢとは、世界的な金融危機の再発を防止する目的で、国際的に事業を展開する大手銀行に対して、自己資本の強化を要求する規制のことである。バーゼルⅢは、バーゼル銀行監督委員会が公表している国際的な統一基準(バーゼル規制)の新しい枠組みだ。
つまりCoCo債は、シニア債やTLAC債、劣後債よりも弁済順位は低く、ハイリスク・ハイリターンの金融商品となります。万が一、発行体がデフォルト(債務不履行)を起こした場合、通常の社債よりも債務の弁済順位は低いです。
そのため、CoCo債は通常の社債よりも元本割れを起こすリスクを抱えた債権と言えます。
CoCo債(偶発転換社債)の利回りと格付
CoCo債は、通常の社債よりも元本割れを起こすリスクが高い反面、利回りは投資適格社債よりも高めに設定されています。投資適格社債とは信用力が高い社債のことで、格付は「A-(エーマイナス)」に分類されます。
格付は、格付会社が社債の発行体企業の信用力を調査し、AAA(トリプル・エー)やC(シングル・シー)のようにランク付けを行います。ランク付けの表記方法は格付会社によって異なりますが、AAAが最も信用度が高く、Cが最も信用度が低くなります。
債券の種類 | 格付 | 利回り |
---|---|---|
投資適格社債 | A- | 3.1% |
CoCo債 | BB | 5.5% |
ハイイールド社債 | B+ | 6.2% |
CoCo債の格付はBB(ダブル・ビー)であり、BBの格付は「当面の信用力に問題はないが、経営環境の変化によって信用力が低下する可能性がある」という意味になります。
CoCo債(偶発転換社債)のメリット
利回りが高い
CoCo債の最大のメリットは、通常の社債よりも高い利回りが見込めることです。
利回りが高い理由は先ほど触れたので詳しくは省略しますが、年利数%程度の利回りが期待できます。CoCo債の利回りはハイイールド社債と並び、社債の中では高利回りであると言えます。
CoCo債(偶発転換社債)のデメリットやリスク
株式に転換される可能性がある
CoCo債はトリガー条項に抵触すると、株式に転換される可能性があることがデメリットです。CoCo債は償還期限のない永久債であり、株式に転換されない限りは永久的に利子を受け取れます。しかし、株式に転換されると利子は受け取れなくなってしまいます。
CoCo債は、年利数%程度の利回りを受け取れる大きなメリットがある一方で、株式に転換された時点でそのメリットは消失してしまいます。
なお、トリガー条項は「自己資本比率が一定水準以下に下がったとき」に発動されます。自己資本比率が一定水準以下に下がると株価も下落するため、値下がりを続けている株式に強制的に転換されることは大きなデメリットと言えるでしょう。
発行体のデフォルトリスクがある
CoCo債には、発行体のデフォルトリスクがあることも大きなデメリットです。CoCo債を発行している企業がデフォルトを起こすと元本割れになり、投資したお金が全額戻ってこなくなってしまいます。
CoCo債の発行体企業は信用力が低いケースも多く、そのような企業では倒産や上場廃止などのリスクがあります。実際に2020年には、CoCo債を発行していたドイツ銀行が利子の支払いを延期したことがあり、デフォルトは起こさなかったものの倒産が懸念されました。
このように、CoCo債には発行体のデフォルトリスクがあることは覚えておきましょう。
2,000万円などの高額な資金が必要
CoCo債は最低購入金額のハードルが高く、購入するには2,000万円などの高額な資金が必要になってくるケースがほとんどです。つまりCoCo債は誰でも気軽に購入できる金融商品ではなく、富裕層向けの金融商品になります。
一般的に日本の債券市場は狭く、日本の証券会社や銀行で購入できる債券は日本国債や小口の社債などに限られます。日本の証券会社や銀行では大口のCoCo債の売買ができない場合があり、このように流動性が低いことも大きなデメリットです。
CoCo債(偶発転換社債)以外の金融商品を検討したい方は?
ここまで見てきた通り、CoCo債は比較的新しい金融商品であり、通常の債券と比較してハイリスク・ハイリターンなことが特徴です。そのため、発行元によっては大きな利益を得られる可能性がありますが、反対に大きな損失を被ってしまうケースもあるでしょう。
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