富裕層のためのデスティネーション

タイ王室御用達のシークレットリゾート


 バンコク国際空港から高層ビルが立ち並ぶ市街地を横切り、タイ湾に沿ってマレー半島を南下する。距離にしておよそ250キロ、ハイウェイでおよそ2時間半、定期便のセスナなら40分の距離にあるタイ王室御用達のリゾートが「ホアヒン(フアヒン)」。
 
 南北に続く白砂のビーチと本格的なゴルフコース、高級ホテルやレストランが立ち並ぶ街など、王族やバンコクのブルジョアが競って別荘を建てたエリアであることも頷ける。タイ語で「ホア」は頭、「ヒン」は石という意味で、頭の形をした石があるのが地名の由来だそうだ。この地は、1911年にバンコクからマレー鉄道に繋がる路線が開通し、当時英国の植民地であったマレーシアからホアヒンに外国人が保養に訪れるようになってから、リゾートとして発展した。


 ホアヒンの駅には、かつて王族たちが使用していた待合室が残っていることからも、この地の由緒正しさが伺える。ホアヒンの北にあるペチャブリには、歴代の国王が夏を過ごした離宮があり、1916年に完成したバンブン離宮は、ドイツ人の設計で外観とインテリアはヨーロッパ調で統一。1923年に建立されたプラ・ラチャニウエート・マルカット・タヤワン離宮は、イタリア人の設計で、ベランダの美しさがとくに有名。現在のプミポン・アドゥンラヤデート王ラーマ9 世(プミポン国王)は、一年の多くをここホアヒンのクライカンウォン宮殿で過ごしていることからも、治安の良さは折り紙つき。
 
 ホアヒンは、まだ日本からの渡航者も少なく、ヨーロッパや北欧のセレブリティや富裕層から、ロングステイやセカンドライフのデスティネーションとして非常に人気があるそうだ。

シークレットリゾートの魅力


 ホアヒンはこのように王族の御用達リゾートとして発展したため、日本で有名なプーケットやパタヤビーチのような喧騒とは全く異なる、大人のリゾートとしての趣がある。白砂のビーチでも、一部エリアを除いてモーターマリンスポーツが禁止され、乗馬を楽しむなど、しっとりとしたリゾート上級者の隠れ家的なイメージが魅力的だ。
 
 また、1924年にタイで初めて作られた王族のための本格的チャンピオンコース「ロイヤル ホアヒンゴルフコース」をはじめ、タイのゴルフ発祥の地といわれる「パームヒルズリゾート&カントリークラブ」。ジャック・ニクラスの設計でワールドクラスのチャンピオンコース「スプリングフィールド ヴィレッジ ゴルフ&スパ」。
 
 マウンテンコース、レイクコース、ディサートコースの3つコースで構成され、27ホールのコースがある「インペリアル レイクビュー ホテル&ゴルフクラブ」。フェアウェイが長くて美しい「マジェスティッククリークカントリークラブ」。さらには昨年オープンしたばかりの、チャンピオンコース「ブラック マウンテン」など、タイ有数のラグジュアリーなゴルフリゾートが、ここホアヒンに集中していることも大人のリゾートたる由縁。コースレイアウトはシーサイドからアップダウンのあるテクニカルなコースまで、多彩なレイアウトが長期滞在の楽しみだ。

ホリスティック・スパの隠れた聖地


 そして、近年にわかに注目を集めている秘密は、「ホリスティック・スパの隠れた聖地」という一面。世界中のセレブリティをリピーターに抱えるアジア初のデスティネーション・スパの「チバソム インターナショナルヘルス&リゾート」がオープンして十年以上になるが、今でもその人気は衰えず、世界中のスパフリークやセレブ、アスリートなどがリピーターとしてチバソムを訪れることが確かな技術を裏付ける証拠。
 
 チバソムとは、英語で「Heaven of life(やすらぎの隠れ家)」を意味し、7エーカーもの土地にタイ様式の庭園が広がり、その奥に充実のファシリティが点在する。チェックインの際には、ヘルス&ウェルネスコンサルテーションが行われ、ゲストの健康状態からオーダーメイドのスケジュールを作成。すでに症状としてあらわれている健康問題の治療、依存症治療プログラム、予防医学療法、感情的な問題へのアプローチなど、ホリスティック・ヘルスが提供するサービスは様々。100種類を超えるトリートメントを組み合わせなど、オーダーメイドのプログラムを作成し、マインド・ボディ・スピリットのバランスを調和させる。さらに従来の単調なヘルシーメニューとは一線を画した「スパキュイジーヌ」と題したまったく新しいコンセプトの料理により、滞在中の完璧なカロリーコントロールがされるという。
 
 まさに美と健康のための聖地といえるだろう。ここでは、単なる癒しの空間やデトックスなどのスパ施設を提供するだけではなく、個人それぞれの目的に応じた本格的なアクティビティが専門の医師、看護士、自然療法医などから提供され、心身ともにリフレッシュできることがチバソムの魅力といえるだろう。ここ数年で、シックスセンシズやハイアットといった有名ブランドが個性派スパを次々とオープンさせていることからも、ホリスティック・スパの聖地として見逃せないエリアとなっている。

日本のエグゼクティブも夢中


 日本では、さほど知られていないホアヒンでも、日本からの渡航者の姿を見かけることがある。彼らは、ホアヒンリピーターかリゾート上級者といった趣を持ち、一日中プールサイドで読書したり、SPAで疲れた肉体を癒したりしている。他のリゾートで見かけるような、団体でホテルにチェックインしている姿やショッピングに明け暮れるといった環境がないのが、ホアヒンのもうひとつの魅力だ。
 
 もちろん、北欧やヨーロッパから訪れるセレブリティは数週間から数ヶ月単位でここに滞在するため、生活に必要なものはすべてこの街で買い揃えることができるそうだ。しかも、地元の人々と渡航者の二重プライスはあるにしても、圧倒的にコストが安いというのも、長期滞在のための重要なポイントだろう。


 外資系日本法人のドイツ人経営者もホアヒンの魅力について語っている。「ホアヒンはアジア随一のリゾート。年間3回はホアヒンに行くね。」聞くところによると、この方の奥様は日本人で、外資系メーカーに勤務しているDINKSのようだ。奥様も「ホアヒンのタラソテラピーやデトックスを体験したら、日頃のストレスが一気に解消されるわ。ずっとここにいられたら、アンチエイジングなんていらないわ。」とご夫婦揃ってホアヒンに夢中なようだ。
 
 このご夫婦は、ホアヒンに数年前から頻繁に訪れるようになり、ここに別荘を建て、数年後には移住しようという計画もあるそうだ。ハワイをはじめ、あらゆるビーチリゾートで最上級の遊びをしてきたという、この方たちが永住を考えているホアヒン。ますます魅力的なリゾートである。

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