夫と私の子ども時代は、暗記と詰め込みが主体の受験社会でした。我々はその中で揉まれながら医学部を卒業し、ともに医師として働いています。しかし、子どもを育てる親の立場になってみれば、自分と同様の軌跡をなぞらせるだけでは、これからの時代を渡って歩くには不十分だと感じました。
我が家では、子どもに教育を与えるにあたって、娘たちが25歳になったあたりの社会状況を想定することから始めました。
グローバル化が進み地球上のあらゆる距離がさらに縮まっているであろうその時代に、世界人として生きられるためには、次のような能力が求められるのではないかと考えます。
●発想力・創造力
●暗記した知識でなく、論理に基づく思考力
●本質を見抜く力=問題発見力
●情報検索力
●問題解決力
●独自の結論を導き出す考察力
●他人を納得させうるプレゼンテーション力
●世界語としての英語力(+第二外国語)
●IT能力
●人脈(を得る)力
娘たちをそういった面で育み鍛えてくれる学校をさがした結果、年齢が離れ文化も異なる子どもが一緒に生活するボーディングスクールが最も適していると思われました。だから我が家では、長女の桜が誕生した直後から、「ボーディングスクールに留学させる」という目標を定めて準備を重ね、次女の楓が1年生になるのを機に、姉妹そろってボーディングスクールへ留学させることにしたのです。
とはいえ、日本の学校が最初から眼中になかったわけではありません。いくつか見学に出向いて検討したりもしました。けれども、娘たちを託すには至りませんでした。私は、日本の学校には2つの問題点があると考えています。
1つめは、実際に行われている教育内容が、進歩しているだろうと期待したものの30数年前の私の子どもの頃とあまり変わっておらず、先ほど列挙した一連の能力を獲得しやすいようには設定されていない現状。
2つめは、人びとの平等意識が強く、出る杭は打たれがちな風潮の中、上昇志向というものが、健全な意欲を開拓し地道な努力を引き出すための、プラス要因として評価されるとは限らない雰囲気。
これらがネックとなって、伸びたい・伸ばしたい才能を秘めた個人を、ぐんぐん伸ばせる環境が、十分に整備されていないと感じるのです。
「ボーディングスクールに留学させる」という目標を、姉妹が6歳と5歳という低年齢で実行に移した背景として、熾烈な受験勉強を小学生で経験し御三家と呼ばれる私立男子校を卒業した夫が、子どもには中学受験をさせたがらなかったことが大きく関わっています。また、私のほうも、かつて日本に存在した和製ボーディングスクールである旧制高校で教育を受けた父から当時の仲間との貴重な思い出を折に触れ聞かされた影響か、ボーディングスクールに対する抵抗があまりありませんでした。娘たちには、日本のお受験とは無縁な環境で勉強し、のびのびした子ども時代を過ごさせてやりたいと願いました。
『低年齢でのボーディングスクール留学』は、あくまでも国際子育ての1選択肢にしか過ぎません。何を目標に定めるかは、それぞれのご家庭で違って当然なのです。しかしいずれの場合においても、子どもが大学を卒業し社会に出るころ(25歳くらい)の世界を念頭に置いて計画することは、重要なポイントではないかと考えます。
お子さんが現在、
・15歳なら、2019年の世界を。
・10歳なら、2024年の世界を。
・ 5歳なら、2029年の世界を。
・ 0歳なら、2034年の世界を。
どのような人間になっていてほしいでしょうか?
世界は、そして日本は、どんな風に変わっているでしょうか?
その状況下で必要とされる能力とは何でしょうか?
――― 25歳にフォーカスを合わせ、教育プランを組み立てましょう!
さて、2001年9月、6歳と5歳でスイスに留学した桜と楓は、ガレンでどんな学校生活を送ったのでしょうか?
次回はそれについて述べたいと思います。