同じLAには、知名度も実力も上のドジャースの存在がある。チームカラーは同じ青。エンゼルスはそれを赤に替えたのだ。また、同時にチーム名もアナハイムからロサンゼルスに替えた。これが大変革の第一歩だった。南カリフォルニアの赤いチーム。それがアイデンティティーとなった。そしてゲレーロ選手ら戦力補強で強豪チームとなった。
だが、強いだけではない。モレノ氏は広告ビジネスで成功しただけに、営業面でも力を入れた。球場を訪れた際には、オーナー室にいることは滅多にない。必ずスタンドでビールを飲みながら、観客目線で試合を観戦する。入場料、グッズ、ビールなどの値下げを行い、ファン層を拡大させた。現在ではLAと言えば、ドジャースではなくエンゼルスだ。
ここ最近は地区優勝は当たり前のようになり、年間の観客動員数は300万人以上で、また球団の価値も倍近くの400億円に上るのではないかと見られている。
そんな敏腕オーナーのお眼鏡にかなったのが、松井選手だった。ヤンキース時代も読売新聞社など6社の広告出稿があり、さらには多くの日本人観光客が訪れた。ソロバンを弾くと「JAPAN MONEY」というこれまでなかった要素を入れる大きなチャンスでもある。さらに、イチロー選手のいるマリナーズとの対戦もあり、多くの日本人観光客が見込める。そうした選手を約半分の年棒で雇うことができるチャンスだったのだ。
と同時に、松井選手には外野手としてフル出場したいという、野球人としての強いこだわりがあった。戦力的に見ても、中軸打者としてフル出場すれば、100打点以上は確実に稼いでくれそうな勝負強さは魅力的だろう。
ゴジラと、モレノオーナーとの出会い。これは運命なのか。男としての意地と、敏腕ビジネスマンの感覚が、来季LAから新しい風を日本に運んできそう。