低年齢向けインターナショナルボーディングスクールであるLa Garenne(以下、ガレンと呼びます)は、スイスのフランス語圏モントルーの近郊・ヴィラールというところにあります。アルプスの中腹に位置し、冬場は高級スキーリゾートとなります。
第1話でも述べましたように、ガレンは、就学前の4-5歳から、ミドルスクールにあたる13-14歳の学年まで、全部で80人くらいの生徒を受け容れています。
それら生徒の大半が、フルボーダー(寄宿生)として学校内の寄宿舎に寝泊りして生活しています。また、平日だけ寄宿して週末は自宅に帰るハーフボーダー(半寄宿生)や、デイスチューデント(通学生)も、少数ながら在籍しています。しかし、半寄宿生や通学生も、ほとんどは地元スイス人の子どもではなく、親の赴任に帯同してスイス国内の都市に一時的に居住する外国人家庭の子どもです。
近隣のジュネーブやローザンヌにはたくさんの日本人が一家で住んでいますが、桜と楓が入学した2001年9月の時点で、ガレンには日本人の生徒は他に1人もいませんでした。桜と楓は、かつてガレンに来た最も小さな日本人ということで、温かく迎えていただきました。
ガレンの教育システムは、イギリス式カリキュラムに沿って英語で授業を行うブリティッシュセクションと、フランス式カリキュラムに沿ってフランス語で授業を行うフレンチセクションの、2通りのコースがあり、入学時に好きなほうを選択することができます。桜と楓は、あとあとの進路を考慮してブリティッシュセクションに決め、1年生と2年生になりました。
ブリティッシュセクションの1クラスの生徒数は、1年生が4人、2年生が7人。まるで寺子屋みたいな授業風景です。先生の目がよく行き届く中で、桜と楓は次第に学校に慣れ、それぞれのクラスで友人を作り個性を発揮していきました。
寄宿舎では、桜や楓と同じ年回りの、リザとベラというロシア人姉妹と一緒に、4人部屋に配属されました。リザ・ベラ姉妹とは、その後3年間ずっと同室で、桜と楓にとっては(そしてリザとベラにとっても)、互いに切っても切れない強固な絆で結ばれる間柄となりました。そのお蔭で、桜と楓がロシア語も少々あやつれるようになったことは、予想外の副産物でした。
日露2組の姉妹が住む4人部屋は、女の子の寄宿舎で最年少ルームでした。この部屋には、パウラという専属のルームメードの女性がいて、学期中は1日たりとも休まず付きっきりで、小さな生徒の身の回りのお世話をします。
パウラは毎朝、その日のスケジュールに合わせて着るものを4人分用意して着替えを手伝い、長い髪を1人ずつ丁寧に編んでくれました。シャワー室では身体の隅々まできれいに洗い上げ、ベッドに入れば眠りにつくまでやさしくお話を聞かせてくれました。
娘たちもリザ・ベラ姉妹も、ともにブリティッシュクラスでしたのでスクールタイムは英語で授業を受けていましたが、寄宿舎でのスタッフの言語はフランス語でした。放課後にパウラが長時間フランス語で密に接していたため、1年もすると全員が、寄宿舎でのフランス語の会話にはさほど苦労しなくなりました。
毎日3度の食事やデザートは、イタリア人シェフ・フェルナンドが、育ち盛りの子ども向きに、栄養たっぷりのメニューを考え、腕によりを掛けて作ってくれます。それを、大きな家族みたいな連帯感でつながる仲間と和気藹々いただく楽しさは、寄宿舎ならではの醍醐味でした。
ガレンでの一般的な平日のタイムスケジュールは、次のとおりです。
7:45am 起床
8:00am 朝食
9:00am 授業
10:00am 休憩
10:30am 授業
0:00pm 昼食
1:00pm 授業またはスポーツ
3:00pm おやつ(軽食)
3:30pm ホームワークまたはスポーツ
5:00pm ホームワーク、入浴
6:30pm 夕食
7:30~9:30pm リラックスタイムののち、就寝
授業科目は、英語・フランス語・算数・理科・地理・コンピューター・音楽・美術などで、学期の真ん中と終わりに、10段階評価の成績が各教科担当教師によってつけられます。成績表は、毎学期終了時に、校長先生からお迎えの両親に手渡されます。また、放課後には自由に選択できる課外授業が行われています。課外授業につきましては、いずれ詳しく述べたいと思います。