5歳と6歳の幼い姉妹をスイスに留学させるにあたり、親としては当然、不安でいっぱいでした。そこで、我が家ではまずサマースクールに参加させて様子を見ることからスタートしました。
あら、冬なのに夏の話題だ、と思われましたか? でも、スイスのサマースクールの申し込みは年明けすぐから始まりますので、この時期サマースクールの情報を集めておくことは、国際子育てを視野に入れておられるご家庭にとって重要です。
スイスの低年齢向けボーディングスクールが開催するサマースクールは、たいてい6月下旬に始まり、8月の上旬か半ばくらいまで、6週間ほどの日程で行われます。参加希望者は、最低2週間以上6週間まで、1週間単位で期間を定めて、英文または仏文で希望する内容を書き、メールかファックスで申し込みをします(日本の留学会社を通して手続きする場合は日本語でも可)。
申し込みは例年1月からで、出足はかなり早いです。近隣のヨーロッパの国々では、スイスのサマースクールはとても人気が高いのです。それらの地域の学校やインターナショナルスクールの夏休みに照準を合わせた6月から7月にかけての前半期間の定員枠は、2月にはもういっぱいでふさがってしまう学校もあります。ですから、前半の予約をなさりたい方は、先手必勝が原則です。
それに対して、7月の終わりから8月にかけての後半期間は、いくらか先まで空席が残っている年もあり、ゆっくり検討されてもおそらく大丈夫です。日本の学校に通われているお子さんは、夏休みの日程を考えると、むしろ後半の方が参加しやすいですね。
サマースクールは、学年ごとに教室で語学(英語/フランス語)やコンピューターの授業が行われますが、成績評価はつきません。正規のイヤープログラムと異なり、学業よりも休暇をエンジョイすることにウェイトが置かれているためです。だから、「英語もフランス語もしゃべれないのに」などと尻込みする必要は、全然ありません。乗馬や水泳やハイキングなどのスポーツメニューの他、週末のショートトリップも盛り込まれ、カリキュラム面でも楽しく過ごせるよう工夫されています。桜と楓は、サマースクールの6週間ですっかりスイスが好きになり、その年の9月からガレンに正式に留学しました。
桜と楓が参加した2001年のガレンのサマースクールの、1人あたりの料金は、2週間で3000SFR(=スイスフラン)、4週間で4500SFR、6週間だと5500SFRでした。この料金の中に、授業料・平日の午後や週末のスポーツやアクティビティーの参加費・毎日3食の食費・寄宿舎での宿泊費が含まれています。往復の国際線航空券代や、滞在中のお小遣い、日本から専任の引率者が付くツアーであれば添乗費、そして任意で加入する海外旅行保険の保険料は、上記の料金に含まれず、別途で各自の負担となります。
いざガレンのサマースクールに出かけるにあたり、娘たちにとっては、乗り継ぎ地のパリを経てジュネーブまで片道15時間(乗り継ぎ時間を含む)ものロングフライトは初めてで、ちょっと心配でした。けれども実際に出発してみると、機内ではさほど手こずる事態も起きず、無事にジュネーブに到着しました。それまでに、もう少し近い距離の飛行経験を何度も積んでおいたのが幸いしたのでしょう。
けれども、まだ幼かった姉妹には、日本とスイスがどんなに遠く離れた位置関係にあるのかが理解できなかったらしく、ジュネーブの鉄道駅のホームでは、いつも乗り慣れた日本の私鉄電車が来るものと信じて、ベンチにちょこんと座って待っています。列車に乗ってからも、「ローザンヌの次は、梅田で乗り換えるんだよね?」などと言い出すので、おかしくて笑ってしまいました。
その無邪気な娘たちを寄宿舎に置いて親だけ引き返す帰路の旅程は、本当につらくてつらくて、涙が溢れてばかりでした。断腸の想いとはこういうものかと痛感させられました。けれども案ずるなかれ、このつらさは時の流れが癒してくれます。つらさに耐えた分だけ、6週間後の再会の喜びはとても大きいものとなります。
ところで、親子のしばしのお別れに際し、覚えておいていただきたいポイントが1つあります。それは、「子どもに対して絶対にその場しのぎのウソをついてはいけない」ということ。つらい気持ちで手放す我が子を不憫に感じるあまり、うっかり「明日になったらお迎えに来るからね。」などと口走ろうものなら、子どもはその言葉を信じて、翌日ずーっと両親が来るのを待ち続け、夜になって今日はもう来ないとわかると、裏切られて落胆しさんざん泣く羽目になります。これではかえってかわいそうです。子どもが理解できてもできなくても、お迎えの日付は正確に伝えておきましょう。
来年を、『サマースクール元年』にしようと決意なさった方は、この冬休みに親子でじっくり戦略を練って、1月になったら始動してくださいね。