10億円に膨らんで知ったFXの怖さ
「機関投資家がポンドにまとまった買いを入れた」
通信社がそう打電したのだが、実は買いを入れたのは磯貝氏個人だったのだ。今から思えば笑い話だが、キモノトレーダーと言われた個人投資家たちが、本職の領域に侵食してきて、その座を脅かすまでになった。とにかく、磯貝氏が注文を出せば、ポンドが大量に動く。海外の機関投資家たちが思うように動かそうとしても、個人がそうさせないだけの力を持った良き時代だったのかもしれない。
「10億円を突破しても、当時の僕の目標は笑われるかもしれないのですが、1兆円になっていました。自分のトレードは正しい。だから、これからどんどん行け~という感じだったんです」
2007年7月に10億円に膨らんだ証拠金は、わずか2カ月後の9月には約3000万円にまで減っていた。その間には、「100年に1度」と言われたサブプライムショックが起きたことで円安が一気に逆流を始めたからだ。「円安+外貨の高金利」という必勝法則は呆気なくつぶれた。
「FXをやらずに、銀行の定期預金にお金を預けていたりしたらソコソコの人生を送っていたんでしょうけどね。でもFXと出会ったから、色々な経験もできまたのだと思っています」
その翌年の2008年10月に、六本木ヒルズの磯貝氏宅にマルサが踏み込んだのだった。ここから人生が一変する。(つづく)