米ネット通販最大手アマゾンが発表した、電子書籍端末「キンドル」向けの自費出版に支払う印税を6月から大幅に引き上げ、70%にすると発表した。日本の印税相場よりも約10倍高く、作家の意欲向上、さらには埋もれている人材の流入など、新たな扉を開ける可能性を秘めている。
アマゾンによると、印税は出荷費用を引いた後の販売価格の70%となる。ただし付帯条件として、定価を抑えて、紙の書籍の最低価格を少なくとも20%下回るものとするなど、いくつか設定される。
日本の印税は、ケースは様々だが6~10%。しかし、70%という数字を提示された作家はどちらを選ぶだろうか? 国内の出版社も印税をアップするなどの方法は必要となるのかもしれない。
これには、アマゾンの事情が見え隠れする。米国の電子書籍市場は、各社ともに成長市場だと捉えているために、今年さらに競争が激しくなると見られている。アマゾンとしては、競争優位性を保つために、作品の充実は絶対不可欠となる。
かつて日本でも当時の松下電器産業、ソニーも電子書籍機器を発売。100万台の売り上げを見込んでいたものの、両者とも事業から撤退した。この敗因の一つに作品数の絶対的な不足だった。
電子機器、出版などの競争激化は否めない。しかし、今回のアマゾンの決定は、埋もれている才能が世に出てくる一つのきっかけとなる可能性は秘めている。どんな天才が出てくるかもわからない。引いては、新たな活字文化を造り出すことになるのかもしれない。そうなると、読者も利益を享受できるようになることは言うまでもない。
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