「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」。
昨年1月に米ニューヨークのハドソン川に不時着した際に、USエアウェイズの旅客機を操縦していたチェスレイ・サレンバーガー機長(59)が3月3日のフライトを最後に引退した。全米はもとより世界から惜しむ声が多い中での花道となった。
「ハドソン川の奇跡」とも呼ばれたこの重大事にも、サレンバーガー機長はバードストライクと呼ばれる鳥がエンジンに飛び込んで制御不能になる状態にも冷静沈着に対処し、150人以上の乗員乗客を救った。
その後、奢ることなく語った言葉が「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」というものだった。サレンバーガー氏は空軍士官学校から、米空軍勤務を得てUSエアウェイズで民間機のパイロットとなった。
またそれだけではない。連邦航空技術委員会委員、、空軍や連邦交通安全委員会のため事故調査も行い、航空安全に関する新しい手順作成にも関与したこともある。それ以外にもUCBerkeley校で、客員教授としてリスクマネジメントを学生たちに教えてもいた。言わば、航空業界において、リスク管理の専門家でもあったということだ。
自身の権益を守るため自己保身に腐心しているような機長には神業と映るだろうが、サレンバーガー氏にとっては簡単なことに過ぎないのだろう。「訓練したことをやってきただけ…」という言葉は本当に自然に感じられる。
アノ事件以降は、自伝の出版、映画化の話も出たことで、今後は日本でもこうした作品からサレンバーガー氏のことを知る機会が増えそうだ。
サレンバーガー機長