中国南端に位置する海南島。ここで今、不動産価格が急騰している。中国の「ハワイ」とも呼ばれる常夏の観光地で、多くの富裕層らが休暇に訪れる場所だ。
バブルのきっかけは、中国政府が1月に「今後10年で世界一のリゾート地にする」と宣言し、投機資金が集中したためだ。特に三亜市では値上がりが激しく、昨年11月に1平方メートルあたり1万3000元だったマンションが、12月には1万8000元に、さらに今年1月末には3万元(約39万円)にまで上昇。約2カ月で倍以上に上がった計算だ。
また、1月に行われた政府の“宣言”の後、1週間で少なくとも4000億元(5兆2000億円)が流入したとの統計もある。先月18日には、海南島の主要都市が、不動産価格の上昇で中国1位にもなった。
しかし、2月14日の春節(旧正月)を機に、投機資金が一斉に撤収を始めたとの見方もある。売れ行きも落ちていき、旅行会社が企画した不動産探しの団体ツアーでは、取り消しが相次いでいるという。
またすでに物件を手放し始めた人たちもいる。三亜市の高級マンション「鳳凰島公寓」は当初、1平方メートルあたり3.8万元から6万元での販売予定だった。だが、1月11日の取引開始日には、平均価格が1平方メートルあたり7万現に値上がりし、最高価格が12万元にまで達した物件だ。しかし、現在は1平方メートルあたり5万元で手放す人が出てきている。一部では、海南島のバブルの危険性を懸念して、早めに資金を引き揚げているようだ。
ここで一つ問題が見えてくる。
海南島は1988年、全島が経済特区に指定され、開発への期待から、不動産価格が急騰。その後、景気が一気に冷え込み、銀行が倒産するなどの深刻な事態になった手痛い失敗の経験がある。
中国改革発展研究院の遅副林(ち ふくりん)院長は、「海南島の国際リゾート計画は、負の影響を多く作り出してしまった。実需とはかけ離れた不動産の急騰を引き起こし、政府がバブルに対して調整能力がないことを露呈させた。そして今、多くの投資家が海南島の安定性に不安を抱き始めている」と危機感を示し、政府が早急に対策を打ち出す必要があると指摘している。
一方、リゾート開発の加速を中国政府が指示した背景には、南シナ海での制空権や制海権の確立を狙い、軍事拠点として海南島のインフラ整備を進める為ではないかとの見方も一部ではある。いずれにせよ、今後、不動産バブルに沸いた海南島がどうなっていくのか目が離せない。