中世ヨーロッパ貴族が愛用したメディカルハーブの歴史

メディチ家がヨーロッパの上流階級に広めたハーブと香水


 古くは古代エジプト時代から薬として使われ、中世の王侯貴族には薬とともに嗜好品として愛用されたハーブ。希少なメディカルハーブは昔から高額な値段で取引され、現代の富裕層のライフスタイルにもなくてはならない存在です。今回「YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)」は、ハーブと貴族の関係、現在の富裕層が好むハーブについて調べてみました。

 ハーブの歴史は古く、古代エジプト時代にはすでに医療用として利用されていました。女王クレオパトラもハーブで染めた湯浴み着を纏い、ハーバルバスに入っていたことが知られています。ハーブは古代エジプトから古代ギリシャに伝わり、古代ローマ時代には帝国の拡大に伴ってヨーロッパ全土に浸透。中世には薬用だけでなく、王侯貴族の嗜好品として定着し、宮殿の敷地内にハーブガーデンを造ることが人気になりました。

 16世紀には、イタリア・フィレンツェで現在も営業する世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」から、ハーブを使った香水が誕生。1533年にメディチ家からフランス王アンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスは、サンタ・マリア・ノヴェッラの香水をフランスに持ち込み、上流階級の貴婦人たちの間で大流行させました。ハーブを調合したサンタ・マリア・ノヴェッラの薬や香水は、メディチ家やナポレオン、多くの王侯貴族に愛されました。そのレシピは現在も変わらずに受け継がれていて、当時の薬の完成度の高さを示しています。


ローマにあるメディチ家邸宅の内部

アメリカ大陸で出会った“幻のハーブ” キャッツクロー


 中世ではハーブはスパイスなどと同じく、非常に希少で高価な品でした。ハーブを手に入れるために中近東やアジアへ遠征が繰り返され、大航海時代には世界中のハーブがヨーロッパに持ち帰られるようになりました。ハーブは当時の貴族にとって、産業と結びついて巨万の富をもたらす魔法の植物でもあったのです。

 大航海時代に欧州人がアメリカ大陸で出会ったメディカルハーブの1つに、「キャッツクロー」があります。

 インカ帝国の時代から2000年もの間、地元民によって大切に育てられてきた植物で、1ヘクタールにわずか2~3本しか生えないため、“幻のハーブ”と呼ばれます。アマゾンの部族の間で飲用されてきたもので、菌を消化する成分が多種含まれ、免疫機能を増強させ、様々な病気や怪我に効果があることがわかっています。多くのハーブは今では値段も安くすぐ手に入れることができますが、このキャッツクローはアマゾンの奥地でしか手に入らない、現在でも大変貴重なハーブです。

 20世紀に入ってからキャッツクローの研究が進み、国際会議で高い抗炎症作用と安全性が報告されました。その結果乱獲が横行し、ただでさえ希少なキャッツクローが一時絶滅の危機に瀕しました。現在キャッツクローを使用していると謳う商品は数多くありますが、中には質の悪いキャッツクローを使用しているものもあり、本来の効果が得られる製品かどうかをきちんと見極めることが必要です。


キャッツクロー

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