上海の万博事前視察にて、上海から少し足をのばして江蘇省を訪れました。上海駅から特急で2時間弱、まずは鎮江駅に到着。駅からほど近く、1600年前に造られた宋の時代の街並みが残る「西津渡古街」は、石畳の狭い路地の両側に書芸やお茶のお店があって落ち着いた風情。ぶらぶら歩いているとなんだかタイムスリップした気分になります。
夕暮れの西津渡古街を歩く
そして、そこから長江を渡って、揚州へ。全長1800キロメートルに及ぶ大運河をはじめ、街中に流れる運河の岸辺には柳が風に揺れています。清の乾隆帝に愛されたという、細長い湖「痩西湖」で、遊覧船に乗っていると、またまたタイムスリップ気分に。皇帝が釣魚台から釣竿をたらすと、人々が潜って、魚を釣り針にかけたのだとか…。美女を連れた皇帝の湖の遊びはどこまでも世離れていたようです。
乾隆帝の舟遊びに思いをはせて
揚州は朝から点心を食べる「早茶」という習慣があって、改装された清代のお金持ちの邸宅でいただいた、押し豆腐の千切りの入ったスープや豚の三枚肉を使ったとろとろの肉団子、赤米の粥などは、身体にも優しく滋養豊かな味でした。
押し豆腐の千切りのスープ
円卓に並ぶ早茶のご馳走
さて、この他にも鑑真和尚ゆかりの大明寺や古運河巡りなどを満喫してから蘇州へ。これまた2500年の歴史を誇る水の都です。春秋時代の呉の国王がここに城を築いたのですが、日本の呉服はこの地の服装が着物に似ていたところから来ているそうです。
世界文化遺産の拙政園
市内にも世界遺産が数多く、明代に作られた中国四大園林の一つで、最大の「拙政園」などを歩いて疲れた…というのもありますが、その日のホテル「蘇州シャングリ・ラ」で、布団にくるまった途端に、即、夢心地に。うーん、この軽やかでいてあたたかく、包まれるような感触はなんだろうと思っていたら、翌日にその秘密が分かったのでした。
蘇州シャングリ・ラのベッドルーム
それは、蘇州の特産であるシルクの真綿(まわた)の布団にあったのです。真綿は繭の中で生糸にするのには至らない品質のものを煮て、精錬し、引き伸ばして綿にしたものです。
茹でた繭からどんどん糸が出ていく
目の前で多量の繭が茹でられ、機械で糸がはき出されているシルク工場で、その綿の引き伸ばしを見てまたびっくり。人の手で四隅を持って均一に薄く引き伸ばすのです。薄い綿を何枚も重ねて作った布団だから、あの軽さとあたたかさを兼ね備えていたのですね。日本で買うよりもかなり安いので、蘇州のお土産としては価値があると思います。私もあの寝心地をもう一度ということで買い求めました。
この均一の引き伸ばしが真綿のポイント
未来に向いた都市上海と、近郊の歴史の街、それぞれの魅力を満喫した旅でした。