春は美術業界も活気付く季節である。
美術館では大規模な展覧会、オークションハウスでも話題性のある華やかなオークションやそれに伴うプレビューやパーティー、そしてアートフェアーの開催など。
アートフェアーというのはいわばアートの見本市。一つの会場に美術商達が作品を持ち寄り集まって売買する場であり、会場内ではコレクターだけではなく、美術評論家や美術館のキュレーター、作家等多くの美術関係者達が集まり情報交換の場でもあり、思わぬネットワークが出来たりもする。
日本ではここ最近になって注目し始められたアートフェアーだが、海外特に欧米では頻繁に行われていて、その波及効果は上海、北京、香港、シンガポールとアジアにまで広がっている。
アートフェアーが活発に行われている欧米で世界的に有名なアートフェアーといえば、ニューヨークのアーモリーショー、ロンドンのフリーズ、パリのフィアック、そしてアートフェアーの最高峰ともいえるアートバーゼル。
特にアートバーゼルはその華やかさでも群を抜いていて、会場には世界中のセレブが集い、プライベートジェットで乗り付けるコレクターもいて、リーマンショックが起きる前には、その数なんと200機あまり。会期中はマドンナやブラッド・ピットまで訪れ大変な話題になった。美術館関係者は美術館の所蔵作品をチョイスに来たりと、5日間の会期中5万人ほどが集まり大変賑わう。そしてその5日間だけで何百億と売り上げるのだ。
ギャラリーにとってはアートバーゼルに出展出来るという事は大変名誉なことで世界的にも一流ギャラリーとして認められたという証。そんなアートフェアーの中でも権威あるアートフェアーなので倍率も大変厳しく、選択方法は公募の形をとっているが過去の展覧会や所属作家などから審査する。ちなみに日本では年によって違うが大体毎年4~5件のみが出展されている。
アートバーゼルのアメリカ版はアートバーゼルマイアミビーチでこちらも盛り上がっているようだ。
ここ最近になって注目し始められたアートフェアーだが、日本の現代アートブームを盛り上げた一因でもある。
数年前のアートバブルが起こる以前の日本では現代アートはなかなか売り上げるのが難しく、若手のギャラリーオーナー達は海外のアートフェアーに出展し作品を売り、彼らの世界基準での知名度を上げ結果価格も上昇することにもなった。日本でも有名になった村上隆や奈良美智の成功は海外のアートフェアーなしにはなかったといっても過言ではないだろう。
アートフェアーの面白さは、なんといっても多くのギャラリーを一度にいくつも見て回れること。それによってアートのトレンドもわかり、また思わぬ掘り出し物に出逢ったりすることも出来る。現在の美術品市場はアートフェアー抜きに語ることは出来ない。
では次回は、そんな面白いアートフェアーの東京版、東京アートフェアーをレポートする。