ワシントンポストの鳩山首相こきおろしと外交の駆け引き

 4月14日付のアメリカ「ワシントン・ポスト紙」はワシントンで47カ国が参加した核安全保障サミットに集まった各国首脳をコラムで採点し、「勝者」と「敗者」に分類しました。この「アル・ケイメン氏」という人物のコラムが日本の鳩山首相を「最大の敗者」とこきおろしたので、話題になっています。(http://www.afpbb.com/article/politics/2718792/5605274 他)

 アメリカの新聞らしく、オバマ米大統領と優先的に時間が割かれた首脳を勝者とし、あしらわれたと目される首脳を敗者として分類し、最大の勝者をオバマ大統領と90分間会談した中国の胡錦涛国家主席とし、最大の敗者は「断然、ツキがなく、ますます変人ぶり(オバマ政権の一部高官たちに言わせれば)を発揮している日本の鳩山由紀夫首相だった。」としています。


オバマ米大統領と鳩山首相

 15日に記者会見した平野官房長官は「一国の首相に対し、些か非礼だ。」と評していますが、「些か」どころか「相当」非礼な内容となっています。

 鳩山氏は普天間問題への理解を求めるべくオバマ大統領との直接会談を望んだようですが、実際には10分間だけ夕食会で隣り合わせになって話をしただけに終わったのですが、それも「せめてもの慰みでようやく与えられたのが、月曜の夕食会中の『非公式』会談だが、それもたぶんメーンコースとデザートの間だったのではないか」との論調です。

 それだけではなく、鳩山氏を「金持ちの子供」とか「由起夫」と呼び捨てにしたり、「あなたは同盟国の首相ではなかったか。核の傘をお忘れか。その上で、まだトヨタを買えというのか。鳩山首相を相手にしたのは、胡錦涛主席だけだ。」等、核の傘に隠れてお金を儲けてその上トヨタを買えというのかというのが日本の姿勢であるかのように、まさに「書きたい放題」の状態の内容でした。

 私が見る限り、日本での報道はニュートラルか「クスクス笑い」が透けて見えるようなニュアンスなので、これに立腹している向きは少ないようです。しかし、宇宙人の鳩山氏に動じる素振りも無いのは興味深いことです。

 そもそも「ワシントン・ポスト紙」は時の政権寄りの傾向が見られるとされますから、米政権内部での普天間基地問題等への煮え切らない対応を揶揄している向きもあるのかもしれません。

 しかし、実際に普天間基地問題は前進した兆候が見られない状況であるので、それ以外の問題を優先して貴重な会談の時間を組み立てるのは当たり前ですし、特に人民元問題や台湾への武器売却、アフガニスタン問題等、懸案の多い中国と時間を優先して割いたこと自体を見て、そこに勝者や敗者を見出すコンセプト自体が「お笑い」なのでしょう。

 このような報道等を踏まえて、ひねくれ者の私が感じるのは、「本当に普天間問題は進展していないのだろうか?」という疑問なのです。

 希望的観測と言われるかもしれませんが、実は「グアム移転」で話が水面下で付いているということも考えられ得るのではないかと、私は穿って見ている面があるのです。

 グアムを視察した北沢防衛相があっさり「グアム移転は難しい」と言ってから、火が消えたようになってしまいましたが、最大の案であることは間違い無いので、現在の議論には不自然さも感じるのです。

 鳩山氏が時間を割いてもらえなかったのではなく、グアムで水面下に決まっていて、それをアメリカ側も知っていて話す必要が無かったとか、アメリカ側をも謀ってグアムをウルトラCで持ち出す為に辛抱しているとかである可能性もあるのではないかと感じているのです。

 まぁ、考えすぎかもしれませんが。。。。笑

 とは言え、現実政治は非常に複雑な世界です。何故なら利権が複雑に絡んでいるからです。とりわけ外交問題に駆け引きはつきものです。

 普天間問題でも、米軍に沖縄に駐留していてもらえる方が安心出来たりメリットのある方々がおられることも事実ですから、あまりに早く本線の議論に持ち込むと潰されるという可能性も大いにあるのです。

 例えば、現在アメリカ最大の懸案のひとつである「アフガニスタン問題」でも、政権内での担当責任者(国防長官や国務長官)達とオバマ大統領のスタンスは微妙に食い違っています。

 カルザイ政権がアメリカ側の主張から幾分離れ、タリバンとの和平を匂わす動きに出ていることに対し、アメリカ政権内部は猛烈なカルザイ批判を展開していますが、オバマ大統領は突然専用機で直接カブールを訪れ、カルザイ大統領と会談するや否やとんぼ返りで帰国しました。

 これは何らかのとりなし(つまり大統領の真意を伝える)ということでなければ発生し得ない行動です。私は政権内部の幹部達とオバマ氏の考え方が食い違い、オバマ氏が思いきった行動に出たものと推測しています。

 政治では「一寸先は闇」と申しますが、これはよく「政局」を語る時に使われる言葉となっています。しかし、利権が絡み、外交が絡む国際政治では結構このようなどんでん返しで一杯喰わせることもあり得ますので、今回の核安全保障サミットでの鳩山氏の行動が周囲を欺く外交駆け引きによる深謀遠慮で、どんでん返しに普天間問題を解決に導くアクションであったらなぁ。。。と考えたりしています。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる