海のあたりから見たニッポン【春編】

 三寒四温とはよく言うが、気温差10度の乱高下に翻弄されたこの4月。やっとダウンジャケットを手放せそうだとホッと一息つく。ふと気がつけばもうゴールデン・ウイークが間近に迫っているではないか。今回はなかなか春が来てくれず、待ち遠しかったと振り返ってみる。


いつもの海岸でも水温も上がって、日も長くなる

 アウトドアをフィールドとするスポーツであれば、肌で季節を感じることはごく当たり前のことだ。サーフィンを愛する者にとっても、1年は平等に訪れる。特に冬場、ウエットスーツという鎧をまとってはいるものの、ほぼ体一つで海に入るという行為は、サーフィンをやらない者の眼には狂気にすらうつるだろう。サーファーとて、なにも好きこのんで冷たい海に飛び込んでいるわけではない。ただ、波に乗ったときの不思議な感覚を一度覚えてしまうと、その魔力に取り憑かれてしまい、寒かろうが辛かろうが追い求めてしまうだけなのである。

 そんなサーファーは、季節に対し無感覚で盲目的かといえばそうではない。冬の足音が近づくと、木々は葉を落とし、サーファーは衣替えをする。ついこの前までは……などと夏を懐かしみながら、厚さ5mmの冬用ウエットスーツに袖を通す。さらに水温が下がればブーツやグローブで防寒。北風が吹けば、それをかわして波に影響のないポイントへ向かう。東から昇った太陽は夏場よりも低く、静かに冷たく海を照らす。

 良い波と仲間がいれば、それで満足。ではあるが、やはり心は夏を思う。本心は永遠のエンドレスサマーを手に入れたいと切望しているのだ。それゆえ、サーファーは人一倍春の訪れを喜ぶ。それは厳しい冬を乗りきった証なのだ。関東は南房総では、2月頃から路肩の菜の花が満開となる。しかし、本格的な春はまだまだ先だ。3月末頃に山桜が咲き始めるのを待つことになる。


桜が咲いても、波の具合が気になって花見どころではないがサーファーの性である

 4月に入ると関東では水温がゆるみ、気の早い者がブーツを脱ぎ始める。馴染みの定食屋にはサヨリや真鯛、メバル、ホウボウ、ホタルイカなどが並ぶ。真冬には釣り人しかいなかった遠浅の海岸では、潮干狩りの光景が見られるようになる。そしてサーファーは北風から逃げるようにポイントを選んでいた冬場から、南風で波が整う場所を目指すようになる。外での着替えが楽になり、長かった冬の終わりに気付く。そして波間に浮かび、太陽が暖めた海水と潮風を肌で感じて、全身で春の到来を受け止めるのだ。

海近くの定食屋で旬の魚をいただくのも楽しみのひとつ

 常夏の南の島で暮らすのもいいが、四季のある日本ならではの情緒を感じながらサーフィンを楽しめるとは、わたしたちはなんと恵まれているのだろう。春が来る時のわくわく感は、ハワイアンやバリニーズには分かるまい。日の出が早くなり、もう明るくなりはじめた午前5時に海へと車を走らせながら、ふと思ってしまうのだ。美しい国に感謝!

美しい日の出に、はやる心を押さえつつ海へと向かう

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