リビングダイニングはFくんの『城』
かくして、本来はリビングの“城主”であったお母さんは、その地位をFくんに引き渡しました。新たな“城主”になったFくんは、自分の城をさらに強化することにしたのです。
食事の場に、勉強道具を持ち込んでいるFくんにとっては、すでに「食事」「勉強」の場です。そして、リビングにはラジカセや本棚もあり、家族との会話という最大の楽しみもあるので「レクレーション」の場としても機能しています。
こうなると、残りはただ一つ。「睡眠」です。リビングをすっかり自分の部屋にしてしまったFくんは、毎晩、寝るためだけに2階の部屋のベッドに入るのが億劫になってきました。
とうとうFくんは自分のベッドをリビングに持ち込んでしまったのです。さすがにお母さんも反対しました。しかしFくんには理由がありました。リビングダイニングの隣に両親の寝室があり、そこに両親と年の離れた弟と妹が一緒に寝ていました。
つまり「ぼくだけ一人で2階に寝るのが、寂しいんだもん」ということだった。
それから2年が経ち、小学6年生になったFくんは、さすがに寝るときは自分の部屋になりましたが、勉強は相変わらずリビングでやっています。家族の間でキャッチボールしていた会話からFくんはどんどん博識ぶりを発揮し、その経験が受験にも活きて、第一志望の難関校、筑波大付属駒場中学に合格しました。
Fくん一家の不文律は、朝食と夕食はできる限り、家族全員でとるということ。リビングダイニングは、家族の大切なターミナルなのです。