ブランドビジネス最大の敵は草食系?

ブランドビジネスを知り尽くした男


田中伸一氏
 失われた10年と今でも言われ、日本経済が活力を失っていた1990年代半ば。街中で必ず目にしたのは、バンブーバッグと、ビットモカシンシューズ。これはイタリアのラグジュアリーブランド「GUCCI(グッチ)」の商品で、独り勝ちしている感があった。

 特に馬具をあしらった特徴的なシューズは、とにかく売れに売れていた。1997年6月、そんな時代のグッチジャパンにCFO(最高財務責任者)として就任したのが田中伸一さんだった。デパートの伊勢丹から転じた。この時40歳。日本企業で同じ年代の頃の役員を探すのは、相当難しかっただろう。

 その頃、名門グッチはデザイナー、トム・フォード氏の作品で輝きを取り戻し、新しいファンを世界中に増やしていた。不況を尻目に、グッチが出すモノはとにかく売れに売れた。いい時代と言えばそうだったのかもしれない。

 だが、それまで長い期間、不振を経験したブランド、いや、もっと言えば企業を内側から立て直すことが急務だった。今回「YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)」は、12年間でグッチジャパンの組織の立て直した功労者でもあり、ブランドビジネスの全てを知り尽くした田中さんに、ブランドビジネスを語ってもらうことにした。

1 2 3 4 5
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる