ブランドビジネス最大の敵は草食系?

CFOが率先して電話に出た


グッチの役員たち(右が田中氏)
 創業者グッチオ・グッチによって築かれた名門ブランド・グッチ。創業者の没後、内部の抗争によってファミリーは株を手放したが、ドメニコ・デ・ソーレが社長に就任し、クリエイティブディレクターにトム・フォードを抜擢すると、大胆に若返り以前にも増して華のあるブランドとして再び表舞台の主役へと躍り出た。

 だが、そんな華やかなラグジュアリーブランドの裏でも、しっかりとしたブランドビジネスが行われていなければならないのは当然。田中伸一さんが、グッチジャパンにCFOとして就任した当時は、まだ、東京・赤坂の本社には約50人しかいない中小企業だったという。そして着任して田中さんが見た光景は、とんでもないものだった。

 「隣の電話が鳴掛っているのに誰も出ないんです。これではいけないと思ってわたしは自分で率先して出るようにしました」

 たとえ電話に出ても他部署のことは分からないのでかえって迷惑を掛けてしまうから、という理由から誰も出なかったのだという。だが、幹部が率先垂範することによって徐々にだが変わってきたという。また、金融機関や百貨店との交渉、人事評価の見直しなどを進め、立て直しを図った。

 「今まで負けグセがついていたこともあり、交渉力がなかったので、銀行や百貨店との条件の交渉をやり直しました。また、公平で公正な人事評価を心がけました。潜在能力は評価の対象にはせずに、成果主義を推進しました。大事なことは、優秀な人材を評価し、ブランド価値を高め、利益を上げることです」

 とにかく商品を出せば売れるという絶頂時にあぐらをかくことなく、ビジネスを展開する上で必要最低限の基盤を整えたことで、グッチは現在も日本市場で確かなポジションを保っている。

 では、日本のブランドビジネス、あるいはブランド市場とはどういうものなのか。

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