日本のラグジュアリーブランド市場
「もう日本では物が売れなくなった」。そんな論調が各メディアにはあふれるようになった。日本から撤退していったブランドも出たほどだ。そして、中国やインドなどには新規出店が相次いでいる。
「中国やインドなどの新興国に出店するのは、量的な施策においては大切です。しかし、あくまで世界全体のブランド戦略で見た場合、東京はロンドン、ミラノ、パリ、ニューヨークなどと同じく重要な位置を占める存在なのです。
成長力では新興国に分があるかもしれないが、確かに東京、ロンドンなどはこれまで築き上げた街の歴史とブランド価値が累積している。ブランドを象徴する店舗出店には重要な場所でもあり、特に東京は、銀座のエルメスやグッチ、アルマーニのようにビルの全フロアでブランド展開するなど、ブランドの期待の大きさをうかがわせる。日本人はもっと自信を持ってもよいのかもしれない。
一方で、ブランドにとっては憂慮すべき問題の一つに、売上が減少し続けている百貨店の存在があった。これまではブランドにとっても大事な拠点であり、ブランド側は百貨店内でも売上を伸ばし続けてきたが、百貨店全体の売上高は13年連続減少(日本百貨店協会調べ)している。田中さんは次のように指摘した。
「今の百貨店に欠けているものは、ズバリ検索性だと思います。『カバンは何処に売っていますか』という顧客の質問に、明確に答えるのは極めて難しいのではないでしょうか。色々な売場で扱っていますし、店頭に出ていない商品や取り寄せられる商品もありますから。でもインターネットで探せば、全国の商品を本当に素早く絞り込めます。絞り込んだ商品を、価格やサービスなどを勘案して購入する店舗を決められます。これが、顧客にとっての満足度の向上につながっています」
いまや大概のものはネット上で探せば、自分が求めているものは出てくる。同じことを百貨店やリアルの店舗に求めることは難しいのかもしれない。だが、オンライン上に載せたからといって何でも売れるわけではない。
売れるためには、商品のブランド力が必要となる。このブランドこそが、ブランドビジネスの核となるのだが、「ブランド」とは何なのか。