52歳以上の役員に引退勧告
日本社会がアーリーリタイアメントできない理由の一つとして、田中さんは、年功序列の給与制度にあるとした。日本は元々、終身雇用を前提として、良く言えば面倒見が良かった。だが弊害もあり、いつまでも上が辞めない。定年を過ぎても、相談役や顧問などの肩書をもらいそのまま会社に残ることが多い。アーリーリタイアメントとは、まさに真逆の発想。「終身雇用」と「給与体系」の2つが、日本のアーリーリタイアメントを阻む大きな壁となっている。
◆以下、田中氏の話
企業を支えているのはヒトですから、モチベーションを上げるために成果に見合った給与体系を作ることが重要です。もちろん終身雇用も大事なことですが、年功序列では新陳代謝ができません。
例えば、日本企業から52歳以上の役員が全員いなくなったとしたら、世の中はものすごく変わりますよ。若い人にも代わりは充分に務まると思います。わたしがグッチグループ日本法人の社長になったのも47歳でしたから。
グッチを立て直した、トム・フォードがチーフデザイナーに就任したのは33歳でしたが、44歳でグッチグループを去りました。シャネル創立者のココ・シャネルが亡くなって40年近く経ちました。でもブランドとしてうまくやっていますよね。
「私が居なければ企業が成り立たない」と思っているのは、ワンマン社長だけでしょうね。もし成り立たないとすれば、それはイエスマンだけを幹部に残してしまったからでしょう。
70歳になっても80歳になっても、ロンドンのグループ本社がいいと言うまで社長を続けることはできたかもしれません。経済的に、自分が恩恵を受けたとしても、パッションのない老人が会社に居ることはとっては「癌」だと思っています。だから、わたしには「名誉○○」などという肩書も必要ありませんでした。
定年は、会社に決めてもらうことじゃなくて、自分が決めることだと思っていますから。