日本社会でアーリーリタイアできない理由

大切なもの、家族、そして…

 アーリーリタイアメントを一般的な概念にするためには、社会のシステムそのものを変える必要があることは前のページまでで説明した。少し視点を変えてみるが、家族はもちろんだが、早く引退すれば、まだ両親がご健在ということもあるだろう。どのような距離で付き合い、そして親孝行するのか。

 ◆以下、田中氏の話

 まず、両親が一番喜ぶことは何かと言うと、孫と会わせてやることなんです。普段、話し相手がなかなかいないし、やはり寂しいんですよね。そして、家族や親戚が話し相手になってやること。年を取っているので、新しい人間関係を築くにも、昔のことでお互い共通のことを知らないと、なかなか話は盛り上がりませんから。

 親孝行のために親の面倒を見たいという方は、稼ぎのいい会社で一気に稼いで辞めるか、面倒も見ながらソコソコの給料で働くか、そのどちらかでしょうね。リタイアしてから1年で父は亡くなったのですが、短い間でしたが精いっぱいの親孝行はできたと思っています。

 何度も言いますが、わたしにとって仕事はツール。人生そのものではありません。

 田中さんは現在、時間はあるのだが意外と忙しいのだという。ゴルフや飲み会の誘いはひっきりなし。今後計画しているのは、グッチ時代に何度も出張したが1度もプライベートで観光することができなかったイタリア観光に出かけることだという。それも、時間があればこそできること。田中さんは最後に一言、こう締めくくった。

 「時間より価値のあるものはありませんよ」

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