何語を教えるか?【2】

 では、学校で何語を教えるか?

 九州や沖縄では、対中国戦略をにらみ中国語を学ぶ時代でしょう。新潟や富山を中心としたエリアは、韓国語を勉強して、『日本海経済圏』の形成に備えるのです。北海道は、ロシアとの『極東経済圏』を視野に入れ、ロシア語を加えるのです。教える人材が確保しやすい都市部では、英語と並んで、上記言語やスペイン語・アラビア語などを加えた中から、選択できるシステムにします。

 日本人の若者の内向き志向が指摘されていますが、彼らの意思とは裏腹に、彼らの未来は、否が応でも外国人を視野に入れなければ生活できない社会になっているかもしれません。その外国人とは、「英語人」であるとは限らないわけです。

 ならば、全国一律に「小学校から英語」一辺倒ではなく、その地域の特性を生かした実用的な外国語を選択科目に入れて学べるように、そして英語は英語で希望する生徒だけをどんどん高いレベルへと引っ張り上げられるように、カリキュラムを柔軟に組み直したらいいのではないでしょうか? そのほうが、足並みそろえて英語を皆に教えるよりも、彼らが大人になったとき愛する日本や地元に居続けたまま安泰に暮らせることにつながるのでは? また、実際に交易のある地域でなら、各言語の先生の確保やノウハウの伝授もなされやすいのでは……? 
 
 英語を使う機会の多い都市部では英語を教えればいいし、他言語が身近となるかもしれない地方では他言語が学べるようにすればいい。北から南まで一斉に「英語」が必要である、という固定観念を変えるときだと思います。「うちの子にはロシア語を身につけさせたいから北海道の学校に転校します」というような需要も期待でき、地方活性効果ももたらしたりして?

 海外の非英語圏が、英語「で」教える教育システムをようやく確立して成功を収め胡坐を書いている間に、あえて英語に偏らずビジネスに重用されるいろんな言語を多角的に習得して次世代に備える日本。英語は後れを取ってしまったけれど、英語の向こう側にある新たな需要を見据えて先鞭をつける日本。居眠りウサギが油断している隙を突いて鮮やかに抜き去り、いつの間にかはるか前をリードするカメを目指す日本。

 『あなたのお国の言葉が使えますよ作戦』とでも名付けましょうか。英語で通じ合う世界は一見、円滑な反面、それぞれの人の心に無意識下で、「どうせ自分の国の情感なんかわかってもらえるはずがない」という垣根を作ります。『あなたのお国の言葉が使えますよ作戦』で、心の垣根をひょいと越え、「大切な友好国」として生き残るための一助となりはしないか……と愚考し、何国人もが英語を難なく駆使するグローバルイングリッシュの時代だからこそ、あえて提案してみました。

 再びイギリスに話題を転じてみましょう。もともと母国語が英語の国・イギリスでは、労せずとも世界中で言葉が通じてしまう状況のもと、「英語以外の外国語を学ぶ動機付け」 の材料が乏しいために、以前から根強かった外国語オンチの傾向に、さらに拍車がかかっているそうです。『偉大なるモノリンガル』に陥らないために、英語以外の外国語を習得する必要性を重く見たイギリス政府は、ついに2007年3月、フランス語やドイツ語のみならず中国語やアラビア語までも選択肢に入れた外国語科目のうち何か1つを、7歳から学ぶ、という方針を打ち出しました。

 今ならまだ、日本は言語鎖国を逆転できる! 
 最後のチャンス、かもしれません……?

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