旅の合間に、東京でシャンパーニュの奥深さを知る機会がありました。まず、その一つはシャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)による「Joie de Vivre(いのち華やぐ)」賞の授賞式。国を越えて生きるよろこびを分かちあうことにつながる業績や生き方を讃える賞で、日本では将来性を加味して、今年の受賞者は尾上菊之助氏。世界で唯一フランス・シャンパーニュ地方だけが名乗れる発泡ワインであり、300年の伝統を誇るシャンパーニュだけあって、会場はフランス大使公邸。尾上菊之助氏は、義理の兄上がフランス人とあって、挨拶の前口上はフランス語で。
受賞の尾上菊之助氏と駐日仏大使、シャンパーニュで乾杯
さて、フランス政府関連の方々やインポーター、プレスなどのゲストには69種類ものシャンパーニュが振舞われ、まさにシャンパーニュの饗宴であり競演。とても感心したのは、パーティの進行に合わせて、「エスプリのシャンパーニュ:生き生きとしてフレッシュ」(爽やかな飲み口の銘柄)、「ボディのシャンパーニュ:コクがあって力強い」(しっかりした味わいの銘柄)、「ハートのシャンパーニュ:ロマンティックなバラ色」(ロゼの逸品)、「魂のシャンパーニュ:神秘的にまで完璧」(プレスティージュの数々)と、順にタイミングを合わせてボトルを開けていくという演出。
シーンに合わせて選ばれたシャンパーニュがずらり
その時間になるとコールがかかって、ゲストがシャンパーニュのボトルが並ぶテーブルを移動していきます。シャンパーニュそれぞれにバランスやインプレッションに特徴があって、この演出のように場面によってベストな一本を選んでいくのがよいのでしょう。印象に残ったという意味では、魂のシャンパーニュに供されたPerrier Jouet“Belle Epoque 2002”が、今宵の私の高揚した気分にはぴったりでした。(シャンパーニュ委員会日本事務局の公式ウェブサイト:www.champagne.jp/)
もう一つは、先月催されたドンぺリニヨンの2002年新ヴィンテージと1996年エノテークのお披露目。市場に出されるのはこの秋以降とのことですが、シャンパーニュの品格を味わった一夜。2002年は、口に含んだ瞬間はフレッシュさを感じるのに徐々に深みが広がる“若々しさと成熟さの2面性を持つ”シャンパーニュ。そしてエノテーク1996年は、エレガントでなめらか、きめの細かさが際立ちます。
ドンペリ二ヨンのまさにシルキーな泡立ち
シャンパーニュはワインのなかでも長く保存できるのもので、“ドンペリ二ヨンに時は関係ない”と最高醸造責任者リシャール・ジェフロワ氏は言います。“力で見せている味は長続きしないがきちんと決まるintensityは心に残る味となる”と、ドンペリ二ヨンの哲学がこの味を生むのだと納得したティスティングでした。