海外大学進学塾「RouteH(ルートH)」の藤井雅徳氏によると、直接的要因として、以下の2点が考えられるといいます。
【1】留学生枠の競争倍率が上がった
留学生の受け入れを積極的に行っている米国の大学でも、学部入学者に占める留学生の割合は10%前後です。日本人留学生は 1994年度から 1997年度にかけて、国別では第 1位を占めていましたが、前述の中国や韓国、さらにはインドなどからの留学生が急増しています。他国の受験者が増えても留学生枠はある程度制限されているため、競争倍率は当然上がります。他のアジアの国の優秀な高校生が入ってくるようになったことで、日本人の合格者数が減少したといえます。
中国や韓国では、トップレベルの高校生は海外の大学に行くのが当然だと考えられています。日本人が東大を目指す感覚で、海外の一流大学が進学先候補に入っているのです。しかし、日本より人口が少なく、日本より少子化が進む韓国から42人もの学部生を送り込んでいることは驚きに値します。
藤井氏「中国人・韓国人の数が近年増えたのは、経済的・国民的背景があると考えています。両国とも以前と比べ経済的に豊かになり、人々が海外に出る余裕が持てるようになりました。また韓国は日本より少子化が進み、国土も小さく資源もない。だからこそ、トップレベルの優秀な人々は、『海外への志向』が強い傾向があります。例えばサムスンなどは海外の大学卒業者をどんどん採用しています。だから大学から海外へ出る人々が増えるのです。」
日本では日本の大学を卒業して日本企業に就職する、というのがまだまだ一般的ですが、中国や韓国のトップ集団では海外大学卒業者であることはもはや当たり前。高校生もあらかじめ海外の大学を視野に入れて将来設計をしているため、海外大学進学者が多くなります。
【2】TOEFLの試験形式が変わり、精神的ハードルが高くなった
2006年7月、世界165カ国7000以上の大学が、留学生の入学審査に用いる英語力判定テスト「TOEFL」の試験方法が変わり、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能統合型の「TOEFL iBT」になりました。そして、従来の「TOEFL PBT」は、2007年に日本では実施されなくなりました。「TOEFL iBT」になり全体的な難易度が高まった上、日本人が得意だった文法問題が外された一方、スピーキングが追加され、日本の高校生にとっては、受験の精神的ハードルが高まりました。
TOEFLは海外大学受験の際の英語力の最低ラインです。例えば、アイビー・リーグの1校であるブラウン大学は、受験生への要求レベルはTOEFLで100点以上を課しています。しかし、TOEFL100点というのは、英検1級レベルをはるかに超える英語力が必要です。インターナショナルスクール出身でもない普通科の高校生が大学受験時点でTOEFL100点というのは、日本における一般的な英語学習では非常に厳しいと言わざるをえません。
さらには、TOEFLをクリアした後は、より高度な英語力を駆使するアメリカの全国共通試験「SAT」の読解・数学・論述試験や、志望動機や留学への熱意を書いたエッセーや課題を提出します。まず入り口であるTOEFLで躓いている日本人には、遠い道のりに感じるのは当然のことでしょう。