「ハーバード大学の日本人数激減」の意外な真相【2】

間接的要因としての少子化と大学全入時代

 また間接的要因として、少子化や大学全入時代、バブル崩壊後の経済不況などの要素もあげられます。ハーバード大学学長のドリュー・ギルピン・ファウスト氏の来日時の感想、「日本の学生や教師は海外で冒険するより、快適な国内にいることを好む傾向があるように感じた」のように、現代の日本人の気質もやはり影響しているようです。

藤井氏「子供の数が減少しているのに大学数は毎年増え、以前と比べかなり競争倍率が下がっています。バブル崩壊後は経済的にも厳しい家庭が多くなったこともあり、子供たちは内向き志向、安全志向の傾向にあります。苦労して海外に行かなくても、それなりに勉強すればどこかの大学には入れる訳ですから、当然ですよね。日本が『正直、そこまで勉強しなくてもいいんじゃない?』という雰囲気になってきたことは事実ではないでしょうか。」

 また、近年は既卒受験(いわゆる浪人生)が少なくなり、受かった大学に通いつつ、仮面浪人をする人が増えています。これも地位を保持しつつチャレンジができ、失敗をしてもダメージを受けない道を選ぶ、安定志向の人が増えているという、一つの事例といえます。

藤井氏「日本では『東大に行って、大学院から海外に行けばいい』、『海外には短期留学すればいい』という思考が根強い。海外の大学入試は模試もなく、合否の判断が難しい不確実性が高い試験です。安定志向の受験生にとっては、海外大受験はリスクが高すぎる。受験校選びからして、海外とは全く違いますから。」

 留学生枠の競争倍率上昇、日本の一般的な英語学習では海外大受験レベルに歯が立たない、経済的理由、内向き志向の高まり。これでは、わざわざ海外でリスクが高い受験をしようと思わない人が増えるのも当然ではないでしょうか。

多様性重視の米国の大学で、日本人がいないのは不都合?

 前回記事で触れましたが、ハーバード大学やイェール大学など、米トップレベルの大学が日本人が少ないことに危機感を抱き、昨年から積極的に広報活動を展開しています。では、この理由は?

藤井氏「これは私の考えですが、ハーバード大学やイェール大学が日本人が少ないことに危機感を抱くのは、米国の大学はダイバーシティ(多様性)を重視しているからだと思います。今、経済成長著しいアジアに、世界の目が向いています。そのアジアの経済大国である日本にも、当然注目は集まります。それなのに、学部生に日本人が全くいないというのは、彼らにとっても都合がよくない。他国とのバランスをとるためにも、もっと日本人に入学して欲しいのです。何だかんだいっても、日本はアジアの経済大国ですから。」

 海外の大学に心配されるほど日本人が少ないという現状。これをどうにかしようと近年立ち上げられたのが、「RouteH」のような海外大学進学塾です。「従来の英語学習では太刀打ちできない。」そういう疑問を持った普通科の高校生が「RouteH」を通して海外トップ大を目指すようになり、今年やっとその成果が出始めました。

藤井氏「RouteHは、普通科の高校生が海外の大学を受けてもいいと思えるような道筋を、引き続き作って行きたいと思います。勇気を持って、来年以降受けてくれる学生が増えてくれることを願っています。」

 今後、ハーバードやイェールなど海外トップレベル大学への進学者はどのような推移を辿るのか。中国・韓国のように「トップレベルの人は海外大卒が当然」という時代が来るのか。海外志向が一般に浸透するのはまだまだこれからですが、今後、大学受験を迎える子供たちには、ぜひ広い視野を持ち、自分の可能性を狭めることなく、進路を選択していってほしいものです。

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