「日本の富裕層は潜水艦を買わない」
前述のように、海外でプライベート潜水艦が発売されたというニュースは時々耳にしますが、では日本の潜水艦事情はどうなのでしょうか。プライベート潜水艦を製造販売する数少ない日本企業の1つ、アミューザジャパンによると、「日本の富裕層は潜水艦を買わない」のだそうです。
現在、日本で潜水艦を製造しているのは三菱重工、川崎重工、そしてアミューザジャパンの3社のみ。アミューザジャパンは2002年、次世代小型潜水艦開発を目的に東京都調布市に設立されました。沖縄に工場を開設し、アジア・オセアニア初のプライベート潜水艦に特化した造船業を行っていました。販売していたのは、水深120メートルまで潜水でき、宙返りなどの3次元の動きができる2人乗り潜水艇(1艇約2億円~6億円)。しかし、現在も潜水艦事業は継続しているものの、事業形態と販売ターゲットは大幅に変わったのだといいます。
「会社設立当初は、日本の富裕層の方にレジャー目的で潜水艦を購入してもらおうと思っていました。ところが、日本人は海外の富裕層に比べて、潜水艦に対する精神的ハードルが高いようで……。実は、これまで1艇も売れていませんでした。そこで2年ほど前から、中東の某国の富裕層専門に事業を行うようになりました。今は2人乗りから10人乗りの潜水艇を開発しています。値段は1艇2億円以上です。」(アミューザジャパン)
日本人にとって潜水艦は「自衛隊など国家機関が所有する乗り物で、個人所有するものではない」というイメージが強く、興味を示した富裕層はいても、実際に購入に至った人はいなかったそうです。反対に海外の富裕層、特に中東の富裕層は海上レジャーに関心が高く、潜水艦に対して抵抗感を持つ人も少なく、購入希望者が多いのだとか。現在は民間から中東の政府系企業へと売却先が変わり、中東に支部工場建設を計画しているそうです。
中東で計画中のプライベート潜水艦専用の港
現在、世界のプライベート潜水艦のメーカーは米国で2~3社、ヨーロッパで2社ほど。潜水艦メーカーの中でも、日本の製造技術は他国と比較して高く、性能において海外の富裕層からの評価は高いようです。
「実は、現在中東のある国で、プライベート潜水艦専用の港の建設計画が進んでいます。潜水艦のための港ですので、上空から見ても港の存在はわかりません。中東の富豪はビジネスジェットにしても、潜水艦にしても進んでいます。彼らの家の裏には普通にビジネスジェットの発着場があって、10分や15分に1回くらい飛んでいたりします。そういう方々は、潜水艦も抵抗なく購入されますね。」(アミューザジャパン)
同じ富裕層と言っても、中東と日本の富裕層では、スケールも感覚も全く異なります。
潜水艦操縦のための免許について国土交通省に問い合わせてみると、「トン数にもよりますが、船舶操縦免許があれば潜水艦を所有・操縦することは可能です」との回答がありました。しかし実際可能だとしても、日本人の多くは、潜水艦を現実的な乗り物として考えにくいのではないでしょうか。