伯爵は結婚式のセレモニーマスター
―当主であるド・ヴォグエ伯爵は普段どのような生活を送っているのですか?
伯爵は当シャトーの経営のほか、所有地の管理、地元の行政(市役所の第一助役を務めています)、近隣のプライベートシャトーが加盟するルート・ジャッククール協会の会長の役割など、いつも忙しくしていて、なかなかつかまりません。
―伯爵は結婚式では何をされますか?
日本人向けのウエディングでは、セレモニーマスターとして式の進行を行います。現城主は歴史を守りつつ新しい試みにも積極的で、日本人マーケット開拓を始めたのも今の城主ですし、毎年クラシックコンサートを催したり、お城のガイドツアーをお芝居仕立てにしたり、新しいアイディアでヴェルリー城の知名度を上げ続けています。
伯爵はお客様には紳士的な態度でもてなしたり、ジョークで楽しませたりしますが、仕事面では大変厳しく、従業員を叱咤することもしばしば。私はすべてのフランスのシャトーを知りませんが、個人でこれだけ古い城を所有している方はあまり多くないと思います。管理が大変なので、今日では自治体が所有して一般公開したり、外国の資産家が買い取ったりすることが多いと聞いています。ヴェルリー城も他の歴史的建造物同様、管理や補修に莫大な費用がかかりますので、宿泊やガイドツアー、ウエディングなどから頂戴したお金を使わせていただくことで、歴史を守り続けています。
城内に宿泊ができる「滞在型」ウエディングとして好評
―1年に何組のカップルがヴェルリー城で結婚式を行いますか?
日本人向けのウエディングプランを始めて5、6年ほど経ちますが、現在では年間約20組のカップルが日本から訪れます。日本の方は写真撮影を重要視されるので、お城の美しい概観で決める方が多いようです。フランスで挙式ができるお城は他にもいくつかありますが、城内に宿泊ができる「滞在型」ウエディングとして好評をいただいています。同じパッケージプランでも、お客様によって雰囲気ががらりと変わるのが不思議です。帰国後もお便りをくださって、日本で再会したお客様もいらっしゃいます。
―結婚式の際に印象に残ったエピソードはありますか?
予期しないハプニングはいくつかありました。美容師さんが予約をすっかり忘れて来なかったり、ドレスを入れた荷物がロストバゲージしたり、注文したはずのウエディングケーキが、箱を開けてみたら全く違う商品だったり…。お客様の優しさと同僚の協力でなんとか乗り切ってこられたのは、本当に恵まれていたと思います。
―城で結婚式を行うことは、フランス人にとっては一般的なのですか?
フランスでは法律で、まず市役所で結婚式をすることが義務付けられています。両家の親戚、友人などの立会いの下、市役所の結婚の間で、市長によって式が執り行われます。ウエディングドレスだったり、シンプルなワンピースだったり、服装はまちまちです。それから個人の宗教や好みで、教会であらためて式を挙げたり、シャトーなどでレセプションパーティーを開いたりします。
値段はそれこそピンからキリまでですが、シャトーでパーティをされる方は、比較的お金に余裕のある方が多いです。フランス人よりも、もしかしたら海外から来る方のほうが、お城で挙式をすることは多いかもしれません。当方でも日本人のほか、ロシア人、アメリカ人などがシャトーを数日間貸しきって大規模なパーティを開くことがあります。