フランス貴族が住む中世のシャトーで結婚式を挙げる【2】

※第1回はこちら
フランス貴族が住む中世のシャトーで結婚式を挙げる【1】

ヴェルリー城でレセプショニストになるまで

―渡辺さんはどういう経緯でヴェルリー城で働くことになったのですか?

 4年間勤めていた損害保険会社を退職し、2002年に1年間の予定で南仏の町エクサンプロヴァンスに語学留学をしました。フランスに残りたい気持ちが強まり、エクスの4つ星ホテル「ヴィラ・ガリシ」にてルームメイドのアルバイトをしながら大学に通い続けました。学生のアルバイトではなく、フランスで正規に働きたいと仕事を探し始めたとき、偶然ヴェルリー城の求人情報をフリーペーパーで見つけ、悩みましたが思い切って応募書類を送りました。

 その後すぐ城主から電話がかかってきて面接を受け、翌週には引越しの準備。家族に状況を説明する時間もないまま、未知の土地へ引っ越してくることになりました。当時、すでにヴェルリー城には近藤さんという男性が働いていて、私はその後任でした。彼が2週間後には日本へ帰国しなくてはならなかったため、夜もほとんど眠れない状況でみっちりと引継ぎをしました。

 ホテル業務の基本、ジャパンデスクとしての役割など、これまでの人生で経験したことのないことばかりで、不安に打ちのめられそうでした。それでもなんとか慣れてきたのは、親切な同僚と、お客様からの励まし、そして城主のサポートがあったからでした。ここは小さなホテルなので、各従業員が助け合って、ときには自分のポスト以外の仕事も行います。私はいま主にレセプショニストとして働いていますが、ときには朝食の準備とサービスを行ったり、急なリクエストがあれば客室の掃除やベッドメイキングもします。

―ジャパンデスクの仕事で苦労することは何ですか?

 ジャパンデスクの仕事としては、最も大切なのは日本の取引先とのやりとりです。日本とフランスの文化の違いをどうフォローするかに骨を折っています。どちらのマインドも理解しなくてはならない立場なので、日本での就業経験もとても役立っています。やりがいを最も感じるのは、お客様が満足されて帰られるときですね。どんな疲れや苦労も、お客様の笑顔や「ありがとう」のひとことで吹っ飛んでしまいます。

―富裕層のお客様ならではのエピソードはありますか?

 シャトーまでの交通手段でしょうか。最寄町の小さな空港までご自身のジェット機で1~2ヶ月に一度いらっしゃるお得意様もいますし、レストランでランチをするためだけにヘリコプターで直接乗り付けるお客様もいらっしゃいます。かと思えば、乗馬の途中に馬で来たい、とおっしゃった方もいました。


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