UAE進出は大学のブランド力も高める
また、海外の大学進出は、UAE側だけにメリットがあるわけではありません。大学施設の建設費を政府が負担してくれるため、大学側は少ない費用で現地校を設立することができます。例えば、アブダビ政府はニューヨーク大学アブダビ校の建設費と奨学金のほとんどを負担しています。
また大学側にとっても、ドバイやアブダビなどの名前は大学のブランド価値をさらに高めてくれるというメリットがあります。成長著しく、派手なニュースで何かと世界を騒がせる中東に現地校をオープンすれば、多々ある大学の中でも目立つ存在になることは確実です。大学のPRという面から見ても、UAEに現地校を出すメリットは大きいのです。
2007年から2008年まで1年間UAE大学に留学していた日本GCC学生友好協会代表の金子家暢さんは、「UAEは独立からまだ30年あまりで、留学生数が多いのが当たり前です。大学の授業も基本的に英語で行われます。留学生が多く、他国の大学を招致する精神的ハードルが低いというのも、海外大学がUAEに進出しやすい1つの要因なのではないでしょうか」と語ります。
UAEの人口は現在約500万人。ニューヨーク大学のように海外から誘致した大学が留学生が多いのはわかりますが、UAEでは地元の大学でも自国民は半数ほどです。例えばUAE大学は半数が留学生で、その7割が湾岸諸国からのアラブ人、3割が東アジア人。欧米人や日本人はほとんど在籍していません。
歴史が浅く元々留学生が多い国だからこそ、海外大学受入れに抵抗感が少ないというのも大きな要因なのです。
日本の大学がUAEに進出する可能性は?
では、日本の大学が今後UAEに進出する可能性はあるのでしょうか。
「日本は慶應義塾大学、一橋大学、早稲田大学など数校の大学がUAEの大学と協定を結んでいます。しかし、実際に事業を共同で行っているところはほとんどなく、現地校開設もありません。早稲田大学は交換留学協定を結んでいますが、実際にUAEへの留学生はほとんどいないようです。」(金子さん)
慶應義塾大学によると、現在ハイファー大学と協定を結んでいるものの、まだ具体的な活動を行っているわけではないとのこと。日本の大学はどこも提携事業や分校開設には至っていないのが現状です。
貿易・金融・交通上だけでなく、高等教育においても世界のハブへと成長中のUAEと中東諸国。世界の大学の勢力図が今後どのように変化していくのか、そして日本の大学が分校を出す可能性は現時点では低いですが、今後日本の大学がどのように中東諸国に関わっていくのかにも注目すべきでしょう。