蔵書や本棚など、本好きにさせるための工夫は、自宅の本棚作りにも参考になるでしょう。カリタス女子中学の2回目を紹介します。(注:記事の中のデータや役職は、2007年の取材当時のものです)
学校のいたるところに“居場所”がある
学校全体が大きな図書館のようなカリタス女子中学校。廊下に面した各教室の壁という壁に、生徒の論文や絵、学級新聞などが所狭しと貼られています。教科スペースの本棚と、それらをつなぐ廊下の壁にも展示物が…。
「本校の教育の特色“書かせるカリタス”のもと、生徒は本で調べたら書き、書いたら掲示したり発表したりしています。さまざまな場所に作品が掲示されていますから、生徒にとっては学校全体がギャラリーとしてのスペース。どこでも自分の作品と対面できます」
(司書教諭・桑田てるみ教諭)
カリタスには国語科主催の『学芸コンクール』というカリキュラムがあります。指定図書を生徒に提示し、感想文を書かせるものですが、いきなり感想文を書かせずに、まず図書館で下調べをしてテーマに合わせた新聞を作成、それから感想文を書かせるそうです。そんな“訓練”を受けているせいか、カリタスの生徒は書くことに抵抗がありません。
書いたものを掲示する目的を村井校長に尋ねると「考えたことを公表できる場所を用意してあげることではないでしょうか」という答えが返って来ました。ここに“書かせるカリタス”の秘密がありそうです。
前回ご紹介した『教科教室型運営方式』だと、生徒が各教科の教室に出向いて授業を受けるので、生徒は固定した席を持っていません。つまり、いたるところに自分の席、すなわち居場所があるということです。そのうえ、自分の作品や意見が学校の各所に貼られています。これは自分の考えを示せるもう一つの居場所です。
頭のよい子が育つ家の、どのお宅にもあったのがこの『書く』という空間。絵を描く、習字を書く、手紙を書く。それは自分の考えの表現であり、書いたものを掲示して家族と共有する、書いたものを通じて心の探求をする。
それが以前ご紹介した、頭のよい子が育つ家=3つのX(表現=express、共有=exchange、探求=explore)です。3つのXがある空間を、四十万さんは『ギャラリー』と呼んでいますが、このギャラリー空間を体現しているのがカリタスでした。そしてこのギャラリーは学校だけではなく、家庭でもすぐに実践できるのです。