表参道には豊かな音の世界にワープできる空間がある。場所は根津美術館の近く。新しくなった美術館は庭園以外に昔の面影はなく、茶道の展示があるにもかかわらず抹茶も飲めないティールームにがっかりした後、ビルの外でスタッフと待合せ後、その秘密の空間にプライベートエレベーターで案内してもらった先に広がっていたのは……。
一見したらアンティーク家具にしか見えない、スピーカーが内蔵されたヴィンテージオーディオ。この世界もなかなか好みだが、さらに重厚な扉を開けると……。
いつもなら新製品には見向きもしない僕の目に飛び込んできたのが、高さ2mほどの銀色のペアの物体だった。どこから見ても常日ごろ愛用しているイギリス ティナント社のミネラルウォーターを彷彿させるロス・ラブグローブのデザインだ。その名は「Muon(ミュオン)」。
イギリスで老舗のスピーカーメーカーのKEF社が100ペア世界限定(受注生産)で1,995万円でリリースしたものだ。オーディオ好きが高じて名古屋から上京したというスタッフのアツイ説明によると、イギリスの名車アストン・マーチンのボディと同じような工程で製造されているらしい。
座り心地のいいソファで英国の紅茶の香りを楽しみながら、CD、レコードと音源を変えながら耳にも美味しい時間を過ごした。トータルにさりげなく統一感を保っているこだわりを感じられるもてなしに心も洗われる。現代アートの似合う空間に配置するとアートにしか見えないそのスピーカーはつい来客の機会を増やしてサプライズを演出したくなるペアのオブジェだ。
100ペア限定なだけに、限定に弱い方はお早めの発注を。
ゆったりし過ぎて、つい長居をしてしまいました。
お後がよろしいようで。
ミニコラム【プロフェッサーの呟き】
いくら美しいデザインフォルムのスピーカーでも、配線が見えると恋も冷める。(最近はスピーカーケーブルを、これ見よがしに見せている人もいるが、いただけない。)特にこのスピーカーの場合は、あたかもオブジェのように感じてもらえる配線計画が必須。女性でいうベースメイクが重要なように……