「もしドラ」大ヒットにドラッカー遺族も大喜び

金も大事だが…

 仕事をそっちのけで社会セクターに熱をあげるということは、なかなか日本社会においては受け入れられることはないだろう。だが、米国には実際にこうしたドラッカーの理論を実践して好業績をあげている企業もあるのだ。

 以下ワルツマン氏)ドラッカーが本にも書いているのですが、人々は工場で働くことで、仕事に充実感を感じ、さらには人生にも充実感を感じたように、仕事と生活の充実が一致していたのです。しかし、人々は現代では仕事だけで充実感は感じていません。終身雇用も消え、何の保証もなく、何が人生に充実感をもたらすのかが見えにくくなっています。

 ボランティアなり、地域社会に貢献するなり、人間としての充実感をもたらすことで、人は仕事にも前向きになり、すべての社会の流れが良くなります。だから、社会セクターが大事になるのです。もちろん、お金も大切なのですが、今、日本に一番欠けているのは充実感じゃないでしょうか。

 米国でも若い世代が、お金に負けないくらい人生の充実感を求める動きが起きています。自分の持つ技量に基づいて、労働時間内にボランティアなどの活動を組み込む。例えばマーケティングの知識があるなら、非営利団体の運営の仕方をアドバイスしたり、コンピュータが得意なら、コミュニティセンターのシステム構築に協力してみたり。

 それには、3つの理由があるのです。1つは地域社会への貢献がなされること、そして
2つ目は、若い人たちは技量があっても、不景気でお客さんがいなかったりするので、活かす場を得られないということ。最後3つ目は、それによってモチベーションが上がって、仕事の生産効率も上がる。

 実際にそういう条件を設けている企業には、いい学生が来るという結果が出ています。まだ、拡がるには時間が掛るでしょうけど。また、ボランティアには限りませんが、例えばグーグルでは、時間(「20%時間」と呼ばれる、勤務の2割を自分の自由な活動に充てることができる)を与えています。おかげで業績もあげていますしね。

 とにかく、ドラッカーはたいへんな日本好きでした。日本のみなさんが著書を手にとってくれていることを喜んでいると思います。


「ドラッカーの講義」
 ※ワルツマン氏が選んだドラッカー氏の講義は「ドラッカーの講義(1991-2003)」(アチーブメント出版)に収録されている。

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