この夏を境に再び資金が流入
金融危機後に下火となった美術品オークションが、この夏を境に再び活況を呈しているという。シンワアートオークションの羽佐田信治常務によると「危機後はオークションへの出品作品点数、落札価格ともに低迷していた。だが、弊社主催の今年5月のオークションでは約100点だった出品点数と約1億8000万円だった落札価格が、7月には150点、3億5000万円へとほぼ倍増した」という。
この夏場はむしろ景気の先行き低迷を暗示するような経済指標が多く、決して景況感が改善したわけではない。「美術品の価格が次第に下げ止まる兆候をみて、それまで購入を控えていた層が動き出し、市場動向を見て出品数も増え始めた。危機後にピークの半値近くまで価格が下落したので、さすがに底打ち感が出て潜在的な需要が出始めた印象」(羽佐田氏)。美術品以外の市場では株価が不安定で、金をはじめとする実物資産が高騰し、外為市場では円高が進行している。行き場に困った過剰流動性が、美術品市場に流れ込み始めた可能性がある。