資金が戻り始めた「美術品オークション市場」

日本のオークション市場拡大はこれから

「夏場以降の活況を支えているのは、同じ作者の作品の中でも評価が高く、名作といわれる〝高級品〟。当然、価格は高額で、一時のようにその作者の作品なら何でも売れるというわけではない」(羽佐田氏)。個人も垣根なく自由に参加でき、プロに限定された世界ではないとはいえ、以前よりも厳しい選別眼が求められるということだろう。

 オークションの歴史は古く、紀元前にまでさかのぼる。諸説あるが、欧州最古の歴史文献とされるヘロドトスの『歴史』には、紀元前500年頃にバビロニアで結婚相手を得るために開かれたオークションがその起源と書かれている。

 その後、時を経て1744年に書籍のオークションから出発したサザビーズ、1776年に美術商が創設したクリスティーズが設立された。現在では、世界中の富裕層たちが集まり、さまざまなオークションが開催されている。

 日本でのオークション市場は欧米に比べると歴史も浅く、美術品を中心とした高額品における換金市場の社会的基盤づくりが始まったばかりと言える。しかしながら近年、アートオークションへの参加者は年々増加傾向にあり、21世紀に本格的に産業化していく大きなポテンシャルを秘めた市場だ。

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