無利息なのに増え続ける「タンス預金」の不思議

 「タンス預金」とは金融機関に預けられず、家庭内に保管されている現金のこと。タンスに入れておくことが多いので、このように命名された次第。別にタンスに入れなくても家庭内にあればタンス預金なのだが、世の中には「タンス預金たんす」という不思議な商品も発売されている。

 ちなみに現時点でタンス預金は約44.1兆円(第一生命経済研究所・熊野英生主席エコノミスト推計)あり、1995年以降、急速に増加している。現金のメリットは何よりも流動性だが、タンス預金の保有者たちは、基本的に金融機関や国の保障制度を信じない人々。保有者は運用収益ゼロの犠牲を払ってもでも、自分自身で資産保全をしたいと考えている。

 振り返るとこれらの人々は、日本が金融不安に見舞われた90年代中ごろから、民間金融機関に預けることに伴う不安を回避するために現金保有を選択した。2000年初めには一部で預金封鎖の噂があり、国債すら信じずに自己防衛をしたいと考える人々が、現金はより安全だと考えて保有したことも挙げられる。

 今夏にはやや特殊事例ながら日本初のペイオフが発動されたこともあり、金融機関の信用度はまだまだ盤石ではない。タンス預金は今後もさらに増えると予想される。


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