美術品を高値で買う中国富豪~愛国心からか?

 今月はじめ、イギリスのオークションで清朝乾隆帝時代(18世紀)の花瓶が56億円を超える価格で落札された。これはアジア美術品オークション史上最高の高値で、落札者は中国人だった。これに対しイギリスのメディアは「中国人の愛国主義から美術品が買われている」と報じている。

 オークション前、この花瓶は80万ポンドから120万ポンドぐらいで取引されると予測されていたが、最終的にはその45倍以上の4300万ポンドで取引され関係者を驚かせた。手数料や税金などを含めると落札者が支払う価格は5160万ポンド(約69億円)に上るという。

 高さ40センチほどの花瓶は、イギリス人が亡くなった父母の旧宅を整理しているときに出てきたもので、70年以上前に購入したという。専門家によるとこの花瓶は乾隆30数年の官窯の作品で、皇宮に収蔵されていたものと見られる。瓶のそこには「大清乾隆年制」という印字もある。

 花瓶を落札したのは中国・北京から来た富豪という。オークションは後半になるとすべて中国本土から来た中国人だった。この花瓶がどのようにしてイギリスに渡ったのか、はっきりとしないが、おそらくイギリス軍がアヘン戦争の際に略奪し、本国へ持ち帰ったものだ。今回の高額な落札は、こうした歴史的なできことを背景に、流出した文化遺産を取り戻そうという中国人の愛国心からきているとの見方がある。

 だが一方で、中国文物学会名誉会長の長謝辰(ちょう しゃしん)氏は「中国人がオークションに参加するのは絶対に愛国心からではない。なにも道理がない行動だ」と話す。また古美術収蔵家も「美術品が想像以上の高値で取引される現実の裏には、マネーロンダリング目的という一面を払拭できない」と見ている。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる