世界に溢れる〝ワールドダラー〟という麻薬

 〝ワールドダラー〟とは、世界の金融市場に出回っているマネーを測る指標。基軸通貨であるドルの供給量をもとに計算する。米連邦準備理事会(FRB)が米国内に供給した準備預金などの供給量に、米国外の中央銀行などが外貨準備として持つ米国債を加えて算出する。この〝ワールドダラー〟が、今、世界中に溢れ出している。

 おカネがジャブジャブの状態を「カネ余り」「過剰流動性」などというが、この目安とされるのが〝ワールドダラー〟。10月末には約4兆5000億ドル(約370兆円)に達し、リーマン・ショック前の2倍に膨らんだ。

 ブラジルのマンデガ財務省が「国際的にバブルを生じさせかねない」と批判するなど、FRBの量的緩和の副作用を懸念する声は絶えない。また、経済学者や民間エコノミストの間では「将来的に米国内でのインフレ高進を招く」との批判的な意見も聞かれる

 これに対して、「米国のデフレ回避には避けられない措置」「米国経済の再失速を回避する唯一の策」と、擁護する発言も多い。はたしてどちらが正しいのかは、歴史のみぞ知るところだ。

 過剰流動性はいわば麻薬。宴の間は麻痺で心地よいが、補給が途絶えて初めて禁断症状に気付き、それが実はバブルだったことを知る。今は「宴の前夜」なのか、「バランスシートの調整過程」なのか、FRBの真価と、第14代議長の英知が問われている。

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