幸せと金儲けは両立できるか?【2】中途半端に頭いいのはダメ

近江商人の「三方よし」を実践

久米氏

 明大で教えている授業の基本は、近江商人の「三方よし」なんです。売り手よし、買い手よし、世間よしと三者が良くなることで、プロジェクトはうまくいくということ。

 僕が携わっている東京商工会議所墨田支部「墨田ブランドアップ推進会議委員」で、墨田区の職人さんを紹介することになりました。写真はプロに依頼すると、版権が発生して、載せる度にお金がかかってしまう。そこで、つながりのあるカメラ関連のNPO団体に打診してみました。そこには本格的な機材を持ち、写真を撮るのが大好きなアマチュアが2万人もいる。職人はなかなか撮る機会がないだろうと、声をかけたらぜひ撮りたいとすぐに集まった。でもまだ三方よしではない。職人さんからすると、仕事を邪魔されて取材を受けるのは余計なお世話です。でもパシャパシャ撮られているうちに、職人のおじいさんも次第に背筋が伸びてきた。自分の仕事は、写真を撮られるに値するカッコいいものだとわかってきたんですね。

 撮影した人は自分の写真が使われて名前まで出る、職人さんも元気になる、観光協会はその写真を無料で使ってプロモーションできる、これで三方よし。こういう連立方程式みたいなものを考えるのが、人生のゲームとしては一番面白いです。これをビジネスとして起こすには、さらに必要な資質がありますが。

天野氏

 僕が意識しているのは、自分がどんな価値を提供できるかで、どう喜んでもらえるかということだけで、そこから発生する利益はあまり考えていない。自分は前面には出ないで、相手に何かしらの成果が出ることをこちらがサポートすることによって、成果の一部をいただくという考え方ですね。

 値段設定は、自分が心地よい価格にする、としか言いようがないです。要はこの値段をいただくのなら、完全にフルコミットして、すべて出しつくして惜しくないという価格。この程度の価格しかもらわなくて本気になれないという価格にしてしまうと、お互い不幸だと思うんです。高い価格を提供することで、自分にプレッシャーを与えるということもあります。価格を先に決めて、それを上回る価値をいかに生み出すかことをひたすら考えています。

 相手の立場に立つというのが、ビジネスの基本中の基本。当たり前のことなんですけれど、なぜかみんな忘れてしまう。相手だったらどう思うか、自分を常にそのポジションに置いてみる。さらに難易度は高いですが、自分が在りながら、相手の立場にも立つということができればベストですね。これは自己習練で培うものですけど、ビジネスでも、プライベートでも常にそれを意識し続けるということです。できなければ、そこから学ぶという姿勢でいいと思います。◆前篇はこちら◆

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