米長期金利急騰というリスク要因

 15日のニューヨーク市場では、米国債相場が続落。10年債利回りは一時3.56%と、7か月ぶりの高水準となった。減税延長法案が議会を通過し、市場には景気回復期待と同時に、財政赤字拡大懸念が広がっている。FRBにとっては景況感の改善を反映した「良い金利上昇」に加えて、予想外の「悪い金利上昇」が重なった形だ。仮に長期金利上昇が加速すれば、米経済の波乱要因となりかねない。

 FRBは11月3日に量的金融緩和第2弾(QE2)に踏み切り、6000億ドルの国債購入などで市場に潤沢な資金を供給している。このため長短金利差は拡大。2年債と10年債の利回り差は286bp(ベーシスポイント)へ拡大し、2月18日につけた過去最大の292.9bpに近付いている。

 今回合意された減税の2年間延長が実施されれば、財政赤字は10年間で約8580億ドル増加する。これによって、国債の格下げリスクが高まることも想定される。2011年には財政再建重視派の共和党が下院の過半数を握り、大幅な歳出削減を求めるとみられるが、これに対抗する民主党との確執は不可避だ。

 第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは、「現時点では長期金利の急騰は回避され、実体経済の大幅な押し下げは避けられる公算が大きい。ただし、政治的な駆け引きなどにより、実効性の高い中長期の財政赤字削減計画が策定されなければ、長期金利が急騰するリスクがある」と警鐘を鳴らす。

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