VIP専用「顧問医」は医療のコンシェルジュ

 「かかりつけ医」を持つことが奨励されるようになって久しい。ただしこれは大病院の混雑に頭を抱えた厚生労働省が、まずはかかりつけ医にかかり、その紹介で大病院にかかるという仕組みを浸透させるために唱え続けてきたものだ。

 しかし実際には、紹介状制度は形がい化し、多くの大病院が医師不足に苦しみ、救急車も断らざるを得ない状況が頻発している。「かかりつけ医」だけでなく、高度な医療にも対応する「顧問医」の普及が必要だ。

 放射線科医として10万人以上の画像診断を経験し、ドクターネットを運営する佐藤俊彦代表は、「かかりつけ医には、大病院にかかって医療費を使うのをなるべく食い止める〝関所〟の役割が期待されている。体調不良で訪ねても『風邪でしょう』などと曖昧な診断を下されるだけでは意味がない」と語る。

 かといって紹介状を持たずに大病院へいきなり行っても、結局は半日を浪費する。そこで同氏が提唱するのが「顧問医」制度の整備。患者は顧問契約を結んだ医師に対して、24時間365日、医療に関するさまざまな要望を訴えたり、相談したりすることができる。

 顧問医は患者が「調子が悪い」と訴えれば、まず、普段の状態からどんな疾患の可能性があるかを考える。そして、医療機関や医師間のネットワークを利用して、必要な検査を受けられるようにし、適切な医療機関や医師を紹介する。顧問医の条件は、医療関係の豊富な紹介先と人脈を持っていることだ。

 この形態の先進国は米国で、「コンシェルジュ医療」「ブティック医療」などと呼ばれ、すでにお馴染みの存在。専門家であるコンシェルジュ・ドクターは、現在、米国に5000人以上いると言われている。ある程度所得に余裕のある人たちの会員制の医療ケアは、日本でも確実に需要があるだろう。

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