ブレーキを踏みながら疾走する「11億人市場」

 インド経済の高成長が続いている。成長をけん引しているのは個人消費で、背景には所得水準の上昇がある。さらに輸出も持ち直し傾向にあり、これが今後は設備投資を誘発することが予想される。懸念材料はインフレだが、来年以降も高成長は続きそうだ。

 インドの7~9月期の実質GDP成長率は前年同期比8.9%となり、力強い拡大が続いている。中でも個人消費の伸びが同9.3%となり、成長をけん引。伊藤忠商事調査情報部の三輪裕範部長は「2010年の成長率は9%近くに達する可能性が高い。今後も懸念材料はインフレであり、インド経済は2011年も利上げによるスピード調整が必要な、過熱気味の状態が続くだろう」と述べる。

 個人消費は所得環境の高まりを背景に、特に自動車販売の好調が持続。国内自動車販売(乗用車)は、4~6月期に前年同月比32.7%、7~9月期に同33.1%、10~11月期に同29.9%も伸びた。クルマ離れが話題の日本では考えられない販売増で、多少のローン金利の上昇などものともしない旺盛な消費ぶりだ。

 インド準備銀行は12月16日、政策金利であるレポ金利を6.25%で据え置いた。しかし、「インフレ見通しのリスクは上向きとしており、物価動向次第では利上げ再開の可能性を残している」(三輪氏)。疾走する11億人市場は、ブレーキを踏んで減速しながらも、なお高速走行を続けそうだ。

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